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平家物語のshihoのレビュー・感想・評価

平家物語(2021年製作のアニメ)
4.8
読んだことがあるのは有名なプロローグ部分と那須与一の章だけという乏しい知識のまま観たけど、とても面白く有意義だった。OPで「運命が呼んでいる 準備はいいかい?」と聞かれる度に「う〜んいいかなぁ〜〜」とソワソワしてした。

平家のことほぼなんにも知らないから、これまで私の中の彼らは「平清盛の大出世で一時期めちゃくちゃ栄華を極めたけど貴族化しちゃって戦闘力も落ち、調子に乗り過ぎて多方に敵を作り、復讐に燃えるイケイケの源氏に滅ぼされちゃった一族」という紙上の人たちだった。
それがびわという創作の人物をぽんと入れたことで、通常のメタ視点の他に彼女の目を通した「父親を殺された元凶の一族」「でも一緒に育った親しみのある家の人たち」という複雑な半身内視点が加わる。

通して一気見した一周目は、びわが平家の中で重盛の子たちとほのぼのしている和やかな雰囲気の序盤から、だんだんと滅びの足音が大きくなっていく中盤、追い詰められて最期までの終盤と進んでいくうちに悔しさや寂しさが募っていった。終わり方も潔く終わるので最終回まで観た後「なんか虚しい…つらい…」という気持ちが胸を占めた。
 けど名シーンを何回か見直したり最初に戻って愛らしい重盛チルドレンの子供時代を見ていると、「最終回のストーリーは初めから決まっていたとしても 今だけは心にあるよ 君のまま光ってゆけよ」というOPの名曲「光るとき」の歌詞そのまんま、人の生の儚さとその時々の輝きを感じた。彼らにも一人一人に人格や考えがあり、それぞれ違う生き様を見せてくれた。

びわによる平家物語の語りと名場面の描き方も見事だし、四季の美しい景色・その時によって表情を変える水面(平家物語には水がたくさん出てくる)も素晴らしい。そして登場人物たちの生を見届けたという充足感があった。


敷居は全然高くないので強くオススメします!
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