オクターヴ

平家物語のオクターヴのレビュー・感想・評価

平家物語(2021年製作のアニメ)
5.0
京都アニメーションで名を馳せた山田尚子監督の作品とならば観ないわけにはいかない。そして音楽は劇場版『聲の形』で山田尚子監督と組んだ牛尾憲輔である。平安時代末期、びわは琵琶法師である父親を平家の武士に殺されるのだが、その後びわは平家の屋敷に侵入することになる。そこで出会った平家の平重盛に「お前たちはじき滅びる」と予言する。もちろん、結末はわかっているが、その滅びゆく過程をびわの視点を中心に描いていく。山田尚子だからこそ可能な繊細な表現が見事、とても柔らかい。今作でも牛尾憲輔との相性は抜群である。もはや全編が見どころであるが、それでも最終回となる十一話「諸行無常」が凄かった。いよいよ決戦の場は壇ノ浦。追ってきたのは源氏の総大将である源義経。平氏の敗北と滅亡が垣間見えるなか、みなを勇気づけ闘う宗盛と知盛。三種の神器とともに帝の手を取る時子。びわはそのすべてを目に焼き付けようとしている。祇園精舍の鐘の声、諸行無常の響きあり。娑羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらはす。驕れる人も久しからず、ただ春の夜の夢のごとし。令和アニメーションの最高峰である。

オクターヴさんの鑑賞したアニメ