浅野公喜

ロミオの青い空の浅野公喜のレビュー・感想・評価

ロミオの青い空(1995年製作のアニメ)
4.6
煙突掃除夫として働く少年達を描いた「黒い兄弟」原作の世界名作劇場第21作。1つ前の「七つの海のティコ」や1つ後の「名犬ラッシー」はなんとなく記憶に有るのに、今作はタイトルこそ知っていたものの当時観た記憶が殆ど無い、少し不思議な作品でした。調べると当時放送休止が頻発していたとの事で、それも関係しているのかもしれません。

主人公ロミオと盟友アルフレドが辿る運命はあまりに過酷なもので、見ていて辛いものも有ります。しかし、だからこそ彼らを取り巻く人間の些細な優しさでさえ沁みるもの。そしてロミオ達が勇気と情熱を携え時に仲間と手を組み、社会や運命に立ち向かう姿は非常に感動的で、ロミオ達に理解を示すカセラ教授は勿論、親方(&おかみさん)、イザベラ伯爵夫人といった最初は厳しかったり心を閉ざした大人達の心を動かし、ロミオ達の強い味方となっていく様はカタルシス感じるものです。人間を信じることの大切さだけでなく、信じることの危うさ両方をちゃんと描いている点も〇。例えとしては陳腐ですが、道徳の教科書を読んだ時のような、心震わせる展開の連続には思わず涙でした。次元みたいな通称・死神、小公女セーラみたいなアンジェレッタの扱いはちょっと雑に感じましたが(笑)。

また、ロミオもアルフレドも子供にしては勇敢で優しく、志が非常に高いだけでなく、街灯や民家の家の明かりが消えるまで本を読んだり、メルヴィル「白鯨」を読んだりと知的好奇心旺盛な点が好感が持てます。

真っ黒な煙突(=苦労、努力)を通り抜けると青空(=自由、歓び)が広がっているOPはまさに作品そのものを表しており、全話観終えると心が浄化されるようでした。出来ればもっと子供の時に観たかった、という気分にもなりますが、今観たからこそ理解出来るもの、学ぶべきものが今作には有ると思いました。「世界名作劇場」なんて子供向きだ、とは思わずに是非お試しあれ。今だとYoutubeでも全話鑑賞出来ます。

※Wikiによると、放送当時いじめで悩んだり自殺を考えていた視聴者がロミオの生き様を見て「勇気が出た」という手紙を声優に送ったり、第2話放送後には一部で批判こそ有ったものの前週に起こった阪神淡路大震災、同年3月の地下鉄サリン事件の被災者・被害者からも感謝の手紙が届いたそうです。
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