諸葛亮孔明が現代日本に現れたら…?
いわゆる“異世界転生”系になるのでしょうか。
そんな“異世界転生”系の面白みは、転生による“ギャップ”と、セカンドチャンスによる“リベンジ”が融合したカタルシス。だから、本作もその系統だと思ったのですが…少し違うんですね。
何しろ、諸葛亮孔明は完璧超人。
「成長」とは無縁なので、古代中国と現代日本の違いをギャグにする…という方向性を選ばない限りは、彼自身で“ギャップ”を生み出すのは難しいのです。
勿論、本作は孔明を道化師にしません。
そうなると必然的に主軸は彼ではなく、彼が仕える英子(シンガーの卵)の成長がメインになるわけですが…それでは“普通の”芸能界成り上がり物語。正直なところ、新鮮味を感じないのです。
また、重要なポイントである楽曲が微妙。
カタルシスの基本は“ギャップ”ですからね。
低音から高音。スロウからファスト。マイナーからメジャー。その振れ幅にググっと前のめりになるわけで、最初から最後まで明るいと眩しいだけなのです。
そして、諸葛亮孔明である必然性も微妙。
三国志のエピソードを時折混ぜてきますけど“こじつけ”感が前面に出てしまい、それが妙味を醸し出すまでには至っていません。
そもそも登場人物の名前からして微妙。
三国志に関係するのは「赤兎馬」くらいで他の面々は無関係。「彼女が玄徳で、彼は関羽。そうなると彼が張飛の立ち位置だな」なんて思わせる描写は皆無でした。
まあ、そんなわけで。
「諸葛亮孔明が現代日本に甦ったら?」というアイディアは表層であり、本質は芸能界で夢を叶える成長譚。今どきの青春物語として捉えた方が良いと思います。三国志が好きだから…という理由で臨むのはオススメしません。
あと、地味に気になったのが“止め画”の多さ。
本作のキモは演奏する場面だと思うんですが、低予算なのが透けて見えて残念な限り。もう少し、音楽に関わる部分で唸らせてほしかったです。