丁字路

スキップとローファーの丁字路のネタバレレビュー・内容・結末

スキップとローファー(2023年製作のアニメ)
4.4

このレビューはネタバレを含みます

学校空間の雰囲気やコミュニケーションに関する学生の自意識が生々しくて、心のささやかな機微に対する解像度の高さが際立つ作品だった。

自分の言ったことに後から悶々としたり、自分が好かれているか・そうでないかを察知するアンテナが妙に敏感だったりするところにキャラクターとしての枠を超えた人間らしさがある。


現実にもよくある、相手の言ったことが引っかかってピリッとしたり、それ以降の関係がフェードアウトしかねないようなコミュニケーションの不和が結構描写されているのに、みつみを中心に据えることで最終的にはちょっとプラスになるところに着地させているバランス感がすごい。

みつみは他人の感情に関するアンテナが低めだけど(そういうアンテナが必要のない環境で育ってきたから)、みつみなりに考えて反省するし、その都度相手に伝えて向き合おうとするまっすぐな誠実さや衒いのなさが、狭い教室や家庭でねじれていった同級生たちの思春期のこころを少しずつほぐしていく。

直接会話で本心を伝えることには勇気がいるし、「あなたとこの先も関係を続けたい」という気持ちの表れでもあるから、志摩にも響いて本心が引き出るようになっているんだろうな
陰口が聞こえて凹んでも「起き上がるのもむちゃくちゃ得意なんだから!」と言えるみつみは本当に強い


ほのぼの系の作品と異なる部分として、思春期の学生が直面しがちな、学生との間に生じる嫌な部分もちゃんとかいてるところがあると思う

表では同級生に「大丈夫だよ!」って言われたけど裏で愚痴を言っているのを聞いてしまったり、生徒会長選挙が人気投票であったり、ルールを守らない上級生がいたり…

同年代の学生たちが一つの空間で過ごしていくなかで強めに発生するルッキズムを軸にして、誰もが経験したことのあるような生々しい嫌さがある


もうこういう空間には戻りたくないなという気持ちと、今やり直したら彼女たちみたいにもっとうまく学校生活をやれたなあ、という気持ちがふとした瞬間にちらつく

進学校という設定をきっちり取り上げることによって、この作品の大多数の生徒たちが持つ地理的・金銭的なアドバンテージを直視せざるを得ないということもある

あまりいい学生時代を過ごせなくて強いコンプレックスと後悔がある人は私含めメンタルが弱ってるときに視聴しないほうがいいかも
そういうのを加味しても面白さが勝つ作品だったので漫画も読みたくなった




以下はメモ
・OPのアニメーションの質が良くて絵柄もかなり好き
・みつみ
「ちょっと話してないだけで嫌われてるんじゃないかって怖くなったり」もするので決して鈍感ではないなと思う
結月に対して抱いた(そっかあ…私はああいう好かれ方されたことないからすごいって思っちゃうけど… きっといろいろあるのね…)という感想

・志摩
「ほわほわしたキャラがキレた時おだやかな口調でキツいことを喋るし内心はかなりドライ」なのが好きな人はたぶん気に入るキャラ。
他人に対してあまり期待してないのにみつみが自分の噂を信じかけたことにムキになってしまうのが良かった
純粋なみつみが嫌なことの多い世界に飛び込んでいこうとしていることに、過去の自分を重ねて心配していて、「傷つかないで、そのままかわらないでいてくれないかな…」と考えるも、自分が思っていたよりもずっと強いみつみの姿を見て思い直すのが好き

・ミカ
「私がむかつくやつの名前を2つ覚えている間に、岩倉さんは親切にしてくれた人の名前を一つ覚えるんだろう」
「誰でもうらやましがる男の子連れたら自分も何かになれると思ってるのは、私…」
「人を好きになるときって、ないものねだりみたいなとこもあるから もしかしてだけど、志摩くんの持ってないものは、ああいう子が持ってたりすんのかなって」

・誠
「周囲と仲良く成り損ねてしまって何かしらのコミュニティに属さなくては」とか勇気出してしゃべるときに内心「せーのっ」っていうのとか、これまでの経験から、自分はダサいと思われてると考えているので話しかけられても委縮しちゃうのとか、共感性の高いキャラだなと思う
学校でお土産のお菓子をもらったそばから食べるの好き
11話で誠なりにも思うところあって、旧友がかつての自分と同じように結月にバリアを張ってしまっていることを感じて払拭しようと頑張ってるのがよかった。

・結月
舐められないぞっていう気持ちで気張りすぎてたっていう感情がよくわかる
誠との関係性が好き

・高嶺先輩「どの時間が自分にとって良いことにつながるかなんて、わかるのはずっと先のことだものね」

・幼馴染のふみちゃんがすごくかわいい
丁字路

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