晴れない空の降らない雨

怪奇ゾーン グラビティフォールズ シーズン1の晴れない空の降らない雨のレビュー・感想・評価

4.6
 双子のきょうだいディッパーとメイベルが、夏休みのあいだグラビティフォールズという田舎町に住む胡散臭い大叔父のもとで生活するが、この町と森には怪奇現象や怪物がたくさん潜んでいて……という話。
 絵柄に騙されるなかれ、子供も大人も楽しめる作りになっている。最初の方こそ一話完結の子ども向けコメディに思えるが、次第にキャラクターが深掘りされていったり、謎が広がったり深まったりで、気づけば先が気になって仕方ない。全話通してみると、主人公ディッパーの成長譚として段階がしっかり踏まれている。大人向けのジョークや懐かしパロディも多い(日本人には全部は理解できないが結構日本ネタも多い。ストⅡとかカオナシとか)。
 とにかく作りがうまい。ただ風呂敷を広げるだけでなく、部分的に伏線回収しながら新たな謎を見せて惹きつける。単なるギャグに見えたものが実は伏線ってのもある。もっとも、具体的な種明かしまでは決めずに、後で使えるようにと予め撒いている伏線もあるだろう。何にせようまい。
 脇役の配置も絶妙で、過不足がない。例えば、メイベルには同年代の親友やライバルがいる一方で、ディッパーにはそうしたキャラクターが登場しない。「いてもよさそうなのに」と思うが、天才肌のおませ少年というディッパーの性格や彼の成長プロセスを考えると年長者とつるませるべきという判断が働いたのだろう。
 この手のカートゥーンの例に漏れず、アート面での見所は残念ながらほとんどないが、奥行きを感じさせる画面がなかなか多く、これが目立たないながら世界観を支えている特徴の1つでもあるだろう。