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機動戦士ガンダム 水星の魔女のNMのレビュー・感想・評価

機動戦士ガンダム 水星の魔女(2022年製作のアニメ)
3.5
いい意味でガンダムっぽくないのでガンダムアレルギーのかたにもおすすめ。ガンダムを全く知らなくても支障なく観られる。メカやバトル自体に興味がなくても、ストーリーがきちんと面白くて幅広い人にウケると思う。
まだ判断のつかないような子供たちを通して、戦争の葛藤や生命の倫理を描く。

ギャグ要素は少なめ。学園の生徒たちは子どもならではのかわいげのあるキャラや共感し易いキャラは多い。ただ明るめの雰囲気ではありながら、起こっていることはオトナの権力争いや生徒どうしの嫉妬や虐め、プライドのぶつかり合いなど、戦時下並みの様相。
技術は進化したものの、堂々とまたは秘密裏に人格や命が粗末にされがちな世界。
そこを世間知らずの純朴なヒロインがどうやって生き延びるのかが見どころ。
他のキャラたちも、ヒロインと触れ合ううちに人生が大きく変わっていく。
ヒロイン以外は6話あたりからえぐい転換期を迎えていき、この先大変なのはヒロインだけじゃないんだと予感させる。このアニメは壁に当たらない人の方が少なそう。壁はそれぞれ人格や命に関わるレベル。

この世界では昔の戦争以来、操縦者の身体と精神を危険に晒すとしてガンダムの所持製造がタブーとされている。
その時の戦争で功を上げた男がデリング・ベネリット。巨大企業グループ、ベネリット社の総裁、且つ学園の総裁でもあり監査組織の代表でもある。あまりに権力が強く彼自身が法律。独裁的で血も涙もなく、彼の決定に理屈は要らない。突然理由もなくルールを変えても誰も逆らえない。

娘ミオリネは父のせいで自由のない屈辱的な人生を強いられており、全て捨てて地球へ逃げたいとずっと思っていた。母は既に他界。

彼女の婚約者の立場を狙う者も多い。それには彼女を口説き落とすより、決闘に勝つほうが早い。
決闘とは舞台となるこの学園内でのルール。生徒同士で、恋人や謝罪や、金や物などを賭けて戦い、勝ったほうがそれを得る。
そしてデリングの一人娘ミオリネにおいては、父によって決闘のタイトルホルダーがその婚約者となるという特別ルールが設けてある。特にベネリットグループトップの3企業の息子はそれぞれ婚約者の立場を親から期待されている。

スタート時点でのホルダーはグエル・ジェターク。父のジェターク社はグループ内で上位であり、長男グエルに対するプレッシャーは強い。
もちろんミオリネの意思は全く問われておらずグエルを好きなど大嫌い。彼は乱暴者でミオリネを侮蔑する言動を取り、彼について回っている取り巻きも一緒になって虐めてくる。

学園に通う者は親がグループ企業だから入学できているということ。親の財力が強いということは即ち強いMSが作れるということ。

平均して、アーシアン(地球出身者)はここでは非常に弱い立場であり、スペーシアン(それ以外の宇宙在住者)が幅を利かせている。

そこへ水星から転入してきたヒロイン、スレッタ・マーキュリー。
僻地で資源も乏しく人口がとても少ない水星。アーシアンからはスペーシアンとして距離を置かれ、スペーシアンからは田舎者呼ばわりされる。

スレッタは学校に通うのは初めて(現在水星に学校はないらしい)。やりたいことがたくさんある。いつか水星に学校を建てたい。
父は幼い頃に他界。一人っ子。
彼女の愛機エアリアルは子どもの頃から彼女と一緒に過ごし手足の一部であり家族。

転入早々スレッタはグエルから決闘を挑まれる。意外にもスレッタの圧倒的な勝利。
そこへ、そのMSエアリアルはガンダムではないかという疑義が入り決闘が中断。違反として廃棄処分にされそうに。審問の場にエアリアル開発者である母親プロスペラが水星からやってきて説明。お互い証拠が出せない状況で、グエルの父は、仮にガンダムだとしても売上の着火剤になり得ると提案し、この場を切り抜けることができた。
母プロスペラはグエルの父がべリング暗殺を目論んでいることを察し、恐喝まがいの共闘を組んでいた。
母プロスペラの会社もベネリットグループであるシン・セー開発公社代表で、水星で資源等開発を行っている。以前は水星で採れる貴重な物質があったが、今は売上は大きくない。

スレッタは、ホルダーに勝ったため自動的にミオリネの婚約者となった。ミオリネは依然として、結婚が可能となる17歳になる前に何としても地球に脱出するつもりなので、形だけの関係。
ミオリネはこれまで心を閉ざしてきたのでツンツンだったが、スレッタのあまりの純朴さに少しずつ揺れ動く。スレッタはミオリネと友達になりたくて頑張る。

スレッタは愛機を整備するためにもいくつかある寮のどれかに入らなくてはならない。ちらほらと優しい人はいるのだが、アーシアンからもスペーシアンからも距離を置かれる立場、そしてホルダーに対するライバル視などの理由で受け入れてくれるコミュニティがない。
ミオリネはそもそも経営戦略科なので力及ばず。

あるパーティー中、再びエアリアルのガンダム疑惑が再燃し、絶体絶命。そこへ登場したミオリネはその場で株式会社ガンダムの設立を提案し資金を集めた。
二人と仲間たちは会社経営に奔走していく。

スレッタが愛するエアリアルは安全なのか。母プロスペラの真の目的は。
そしてミオリネはこのまま縛られた屈辱の人生を送るのか。
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