こたつむり

機動戦士ガンダム 水星の魔女のこたつむりのレビュー・感想・評価

機動戦士ガンダム 水星の魔女(2022年製作のアニメ)
4.0
その作品を『ガンダム』と呼ぶには何が必要か。
少なくとも、トリコロールに彩られたロボットが活躍する物語…と定義するのは乱暴すぎる話です。せめて「宇宙と地球が分断された話」とか「戦場を駆け抜ける少年少女の物語」と言いたいところ。

が。
僕は紛うことなく“宇宙世紀原理主義者”。
たかだか“その程度”の繋がりであるならば、わざわざ宇宙世紀を捨てる必要はない、と思ってしまうのです。だって宇宙世紀0153以降の物語にすれば何でも描けるのですから。

でも、本作を鑑賞して気付きました。
『ガンダム』と呼ばれるために本当に必要なものを。

それは“挑戦する姿勢”。
「ロボット=子供の観るアニメ」という図式が一般的だった時代に“戦争”を持ち込んだ『機動戦士ガンダム』。華々しい続編という期待を裏切り、エゴを描き切った『Zガンダム』。ガンダムという“商品”をぶち壊すという理念で描かれた『Vガンダム』。すべてを否定しながらもすべてを肯定した『∀ガンダム』。

どれもこれもが既成概念に挑戦した作品でした。
それは宇宙世紀を離れても同じだったと思います。その端緒が『Gガンダム』でしょう。『Vガンダム』では壊せなかった世界観を“あっという間”に壊したのでした。

そして、本作が挑戦したもの。
それはまさに21世紀的とも言える方向性。
性にこだわらない多様性(女性が主人公であり、恋愛においても男女と限らない)と、モビルスーツの使い方が戦争ではなく、学生同士の決闘であること…どれもこれもが前世紀には考えられない内容です。

それでいて、根底にはドロドロとした大人の陰謀が渦巻いているのですから、これはまさしく『ガンダム』。1stシーズンすべてを“序章”として捉えているのも、見事な挑戦だと思いました。

ただ、あえて難を言うならば。
“モビルスーツ”の単語は封印してほしかったです。何しろ“モビルスーツ”の最高傑作は初代『ガンダム』で登場していますからね。それを無意識にも比較しちゃう時点で“野暮ったい”のです。それでも、プラモデルの売れ行きは好調のようですけど。

まあ、そんなわけで。
“宇宙原理主義者”なので不必要にハードルを上げまくって臨みましたが、十二分に面白い作品でした。但し、まだ完結していないので真価は2ndシーズン以降。でも、挑む姿勢は揺るがないと信じています。

逃げればひとつ。進めばふたつ。
こたつむり

こたつむり