きまぐれ熊

機動戦士ガンダム 水星の魔女 第2クールのきまぐれ熊のレビュー・感想・評価

4.3
初めて観たガンダムだったけど、2クールという尺の構成が、必要最低限の描写しか行わない事によって実現されている。それによって異常なテンポ感と、背景を繋ぎ合わせて推測させる効果を生んでいた。おかげで感想合戦や、一瞬しか描写されない要素・背景をもとにした考察を含めて非常に楽しめた。
正直、各キャラの行動理由とか政治情勢の動きを追うのかなり大変な作品だった。
これはね、あれが〜〜なんだよ、っていう解説キャラがおらん。そもそも全容を把握してる人間がおらん。行動を起こすキャラは断片を元に情勢を推測して動いてる。だから神視点ですらピースを繋ぎ合わせないと、描写がない部分の動向を追いきれない作り。
もちろんメインの親子の対話や、ガンダムの呪い、行動が起こす功罪を追ってくだけでもライブ感で楽しめたと思うけどね。

法律による画一的な正解を排除するために企業行政法って概念を持ち出した世界観は面白いアプローチだったと思うし、正誤じゃなくてそれぞれの選択で決着を付けるって落とし前の付け方は面白かった。
親子の呪いについても功罪のグラデーションが絶妙。見事に親の要素を受け継いだ子供ばっかりのキャラ造形も良かった。

戦闘アニメーションは、単純に見ても見応えあるけれど、ストーリー上解説されないし繰り返し見ないと分からないレベルの芸コマのドラマが埋め込まれていて、短い尺の中に多数のアイディアが詰め込まれたバトルばかりで贅沢な作りだった。
ここは鬼滅の刃と真逆のアプローチとも取れて、視聴者を試すような野心を感じるので興味深い。
またバトルを盛り上げる劇伴や、終盤のガンダムのギミックは外連味だらけで序盤の外し具合からすると想像より直球で熱かったのが意外だった。

キャラクターに関してはとにかくヘイトコントロールの上手さが際立ってて、みんな愛せるキャラばっかりだったのが凄い。結果的に名有りのキャラクター、捨てキャラがいなかった。

惜しむらくはプロローグにおけるデリングの引き金に対する落とし所の描写が曖昧だった事、それに対する包括的なテーマへのアンサーのパンチが弱かったところあたり。
でも個々のキャラクターのストーリーの着地点は概ね満足度が高かったので、個人的にはプラスの方が上回ってる。
この辺りが評価の分かれ目だと思う。
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