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機動戦士ガンダム 水星の魔女 第2クールのtakのレビュー・感想・評価

4.2
伝統の継承というと大げさに聞こえるけれど、時代時代で形を変えながらガンダムシリーズは長く愛されている。令和の世になって登場した「水星の魔女」。スタート時には、女子のガンダム、学園もの、コミュ障主人公、決闘によるモビルスーツ戦とこれまでにない要素がたっぷりで個性の強い登場人物たちの言動に毎回盛り上がっていた。

それが第1シーズン最後の方で深い闇の展開になっていく。第17話の衝撃。対立軸の戦闘に巻き込まれ、主人公は母親の言葉に毒されていたことに気付かされる。視聴者をも勇気づけてくれたあの言葉は、スレッタを操るための呪文だったとも言える。モニターの前にいる僕らまで、信じていたものが揺らいでいく不安な気持ちに陥った。ここで投げ出されるなんて😨

そして第2シーズンは、物語の裏に隠れていた真実が次々と明らかになっていく。回が進むごとに、大人の争いに巻き込まれる若者達、地球出身と宇宙出身の対立、わかってくれない大人たち、テクノロジーと人間といったこれまでのガンダムシリーズで語られてきたテーマが、死の影に彩られてどんどん濃厚になっていく。

「水星の魔女」が他のガンダム作品とは違う新たなファン層を掴んだのは、成長物語としての面白さだと思う。大人が作ったルールや世界の中で生きてきた彼ら彼女らが、厳しい現実に巻き込まれながら、とるべき道を選択していく様子には引き込まれる。視聴者が共感できる要素が、うまく散りばめられているからだ。若年層だろうが、僕らみたいなかつて新人類やニュータイプと呼ばれた世代(笑)だろうが、「水星の魔女」は包み込んでくれる。モビルスーツ戦以上にキャラクター同士がぶつかり合う様子が、こんなに面白いガンダム作品はあっただろうか。

エラン5号のチャラいキャラクターがお気に入り。男気ある人物として帰ってきたグエルも、地球寮の面々もそれぞれに活躍の場があるのも素晴らしい。

「逃げればひとつ、進めばふたつ」
その言葉に代表される母プラスペラの教えが全て正しいと信じてきたスレッタが、母に立ち向かうためにクワイエットゼロに向き合うクライマックス。スレッタを縛り付けていたその言葉だが、重圧のかかる立場となったミオリネが現実から逃げない選択をすることにもつながっている。そして最終回で、そのプラスペラにミオリネが叩きつける言葉に、観ているこちらまでハッとさせられる。

予想を超えた救いある結末には驚いたけれど、「帰れるところがあるんだ」と結ばれたファーストガンダムへのオマージュにも思える。こうして伝統は継承されていくのだ。

最終話タイトルにあれを持ってくるとは!泣いちゃうじゃん😭
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