こたつむり

魔法少女まどか☆マギカのこたつむりのレビュー・感想・評価

魔法少女まどか☆マギカ(2011年製作のアニメ)
4.0
いわゆる“見た目と中身が乖離”系。
可愛らしい絵柄ですが中身はダーク、というやつですね。考えてみれば、この路線は昔からギャルゲーの定番。脚本家の虚淵玄さんもギャルゲー出身ですからね。納得です。

でも、自分は抵抗感のほうが大きかったんですよ。登場人物の造形や、遠近感が狂いそうな背景、更には物語の構造そのものもギャルゲーの文法を用いていたので、何やら“むず痒さ”が伴っていたのです。

ただ、今回は再鑑賞。
細部は忘れていても、構造はうろ覚えながらも把握していたので、それこそ“強くてニューゲーム”のように俯瞰した位置で捉えることが出来ました。

特に“常識”を巧みに用いた手腕は圧巻。
「大きなお友達向けの魔法少女アニメ」という先入観を利用することによって、説明すれば冗長になる部分は削除し、物語の面白い部分だけを抽出しているのです。また、その効果は副次的にも作用し、物語のフックとなる“第3話の断絶”を生み出しました。

しかも、ギャルゲーの文法を逆手に取るビジュアル。最も目立つのは《魔女》のイカレた造形ですが、それ以外にも“群衆がいない街”や“背景の使いまわし”なども良い意味で“不協和音”として活用しています。特に“無機質な構造物”の配置は芸術性すらも発揮していました。

ただ、僕も歳を重ね過ぎたのでしょう。
正直なところ、主人公のまどかに“これっぽっち”も共感することが出来ず、寧ろ「ウザい」と思った始末。彼女の敵となる存在(正確には違いますが)の言い分のほうが心に響いてしまったのです。

何しろ、最近は感情だけが先走る人が多くて…それもこれも“ネット炎上”とやらが流行り過ぎた所為でしょうね。理性的に対処できる人は貴重だと思う今日この頃です。

まあ、そんなわけで。
かつてギャルゲーで用いられていたモチーフを一般化した物語。本作の成し遂げた功績は大きなものがありますね。自身の価値観を拡げるためにも、偏見は捨てて臨むが吉です。

また、物語の深遠さで言えば、ギャルゲーには名作が多いので、本作をきっかけに深層にダイブするのも吉。最近の作品は知りませんが『CROSS†CHANNEL』を筆頭に『パンドラの夢』とか『この世の果てで恋を唄う少女YU-NO』などが本作と同じ構造です。興味があれば是非に。
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