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アキバ冥途戦争の都部のレビュー・感想・評価

アキバ冥途戦争(2022年製作のアニメ)
3.9
任侠映画の潮流を組み込んだメイドたちによる仁義なき戦いを描くオリジナルアニメシリーズだが、メイドの皮を被った極道物という名ばかりのそれに傾倒することなく『メイドとは?』『極道とは?』という命題を絡ませる形で追求した作品として非常に一貫性があり面白かった。

各回メイドが羽虫の如く景気よく死んでいくが、暴力という加害行為を行使することで付いて回る業もまあドライに描いているため悪趣味だとは感じない。この悲壮感と諧謔味が正しく同居する奇妙な死の味わいは、ジャンルミックスの後味として正しいように思う──任侠物のあるあるを飛び道具として噛ませることで、ブラックコメディとしての質感をバランスよく維持してるのも要因としては大きいか。

メイドに憧れて上京してきた純粋な語り部が、何故か刃傷沙汰と隣合わせのメイド世界の実態を知っていくという流れはその顛末まで含めて王道ではあるが、ケレン味の効いた題材を考えるとそこで変に奇を衒わない判断が物語の陳腐化を防いでいるきらいもある。あくまでも当人達は大真面目に仁義に則った殺し合いに身を投じているので、ふざけるにしてもシリアスな笑いの指針をブラさないのも良い判断だと思う。
作中世界におけるメイドの命は軽いが、"無い"というわけではないのでそれらを厳かに扱いながらも、傍から見るとかなり馬鹿馬鹿しく感じるカットを要所要所で入れたりと感性の擽り方がこの辺は上手い。

エピソード単位だと野球回と最終回が特に良い。
前者は序盤の因縁の整理とメイド世界の価値観を示唆しながら語り部が語り部たり得る無二の姿勢の誇示を兼ねる為の話として巧みで、後者はメイドと任侠 二足の草鞋を履いた作品としてのケジメを付ける展開や物語の終着点に対する先行き不透明さが齎す緊張感が大変良かった。

個人的な好みの話をすると、俗世における「うわキツ」と揶揄される女性が低っっい声でメイド服着て 萌え仕草やってるのが最高で、万年嵐子は勿論のこと濃厚な広島/呉弁で好き放題を働く愛美・スーパーノヴァ・山岸 人呼んで赤い超新星のキャラクターの立ちっぷりが最高。
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