浅野公喜

ブラック・ジャック OVAの浅野公喜のレビュー・感想・評価

ブラック・ジャック OVA(1993年製作のアニメ)
3.8
言わずと知れた手塚治虫原作の医療物で1993年から2000年、それから11年後の2011年に作られたOVA。キャラクターデザインは2000年代のTV版と比べると大人びた印象で一部女性キャラは劇画風。原作の漫画は家や小学校の図書室に置いてあったのも思い出深かったりします。

戦争や環境問題・公害といった社会問題も盛り込んだ各エピソードはどれも重厚で見応えを感じますが、原作やTV版に有った気がするそれぞれの人間が持つ死生観の対峙、時に滑稽だったり格好悪かったりする人間の生に対する執着やすったもんだといったリアルな人間ドラマが少し省かれている印象で、それが意外と物足りなさを感じる点かもしれません。

それでもこの世界観はTV版にはない魅力が有るのは事実で、エピソードで言えば特に患者の女子高生が山で触れたある物がきっかけでブラックジャックも巨大な陰謀に巻き込まれるオリジナルストーリーの第2話「葬列遊戯」、時に敬語を使い紳士的でブラックジャックにも協力的なドクターキリコが登場する第4話「拒食、ふたりの黒い医者」、銃で撃たれたり謎の親子が登場する夢に悩まされる青年がメインに描かれる第5話「サンメリーダの鴞」、サイコホラー味も有る第9話「人面瘡」が特に印象的。

監督は2011年の2話を除くと故・出崎統御大で、彼らしい止め絵や画面分割、繰り返しショット等が使われており黒い背景に斜めの光る線が描かれ、それが開くとブラックジャックの顔が見える体内アングルも登場。作画レベルも手術シーン含め非常に高いです。
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