たわらさん

攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEXのたわらさんのレビュー・感想・評価

攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX(2002年製作のアニメ)
4.9
電脳化が普及した世界は脳では分かっていても直感的には理解しにくい世界観である。1話に関しても心持では顔や脳のパーツの入れ替えなどしたくないが、目的のためなら遂行する合理性がある。この合理的かつ論理で構築された設定が難解な作品と繋げると同時に、"人"を映し出す合わせ鏡となっている。身体を含めて個を形成すると考えてしまう自分は人間的であるのかもしれない。

✔️Stand Alone Complex
情報ネットワークにより独立した個人が集団的総意に基づく行動を見せる現象。身近な例だと、SNSでニュースに不謹慎な物言いをする者を咎める善人の発言が連鎖していく現象がありますが、そもそも不謹慎な物言いをした発信源が存在しないことがある(不謹慎狩りによるSAC)。作中では"笑い男"をこうするであろうという偶像が出来上がり、模倣犯が多発した。

徐々に個が喪失していく社会での回答はアオイとタチコマの心の移り変わりから導き出されていく。また、9課の訓戒であるスタンドプレイもまた、ゴースト(≠好奇心)に近いものだと考える。

✔️無関心な一般人
レンズ前でアオイが瀬良野を脅迫したり、20話でトグサが倒れていても通行人が見て見ぬふりをしているのが印象的である。今自分に関与しないものには関わろうとはせず、声をあげるのはいざ自分に危害が加わってから。民衆の力による社会への影響力の余波として『ドント・ルック・アップ』を彷彿とさせます。

✔️雑感
・個を消失したアオイへの回答がゴーストを手にしたタチコマのサイドストーリーであり、同時並行に展開していた構成の巧さといったら。
・様々な哲学や人が語られいるため毎話映画一本分かのような重厚感がある。アニメシリーズですら勿体無く、もう少し長尺で観たいと思わせる情報量の厚みがあります。
・場面のシームレスが上手く、引き算が素晴らしすぎる。脚本に無駄がないんですよね。演出(特に背景注目)もあざとくなく、サラッと見せる手腕が窺えます。

「我々の間にはチームプレイなどという都合のいい言い訳は存在せん。有るとすればスタンドプレイから生じるチームワークだけだ」
たわらさん

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