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葬送のフリーレンの鑑賞者のネタバレレビュー・内容・結末

葬送のフリーレン(2023年製作のアニメ)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

RPGを超えてRPGを描く。古典的なRPG要素も取り入れつつも、思わずハッとするような新要素(クヴァールの件など)もある。

魔法の作画良し。呪術廻戦に引き続き、複数のスタイルを同時に重ねる手法が今後のメジャーになるか?

野心的な構図のカットも多数。ただドラゴンとの戦闘シーンの環境の作画はもうちょっと頑張って欲しかった。たぶんこれ、作画法が発明されてないんよな。アニメに限らず一般に戦闘シーンはフレームを飛ばすことで躍動感を表現するわけで。実写であればカメラを速く振るだけで勝手に全面にブラーがかかる。でもアニメではそうはいかない。全面にブラー的な線画を入れるorのっぺりとした作画で他の方法によって躍動感を生み出す(本作が採ったのは後者。写る対象自体を動かすのではなく、その対象を写す視点自体を動かす手法)、のどちらかしかない。前者は漫画的になってしまい作品全体のスタイルの調和を乱すし、後者は他のシーンの作画が細ければ細かいほどのっぺり画が目立ってこれも調和を乱す。どちらにしろ理想形とは言い難い。(敢えて作画の調和を乱すという道もないことはない。それから宇宙空間で戦うとか、のっぺり画でも違和感がない環境にしてしまうという方法もあるか。)
この問題の解決策のひとつが3DCGを活用することですけど、2Dでは解決不能なのかどうか。

それからもうひとつ注目したいのは時間の描き方。何千年も生きるエルフに視点を固定することで、実時間は25min×17にも拘らず、作品世界内時間の何百年を覗き見てきたような錯覚をもたらす。(時間描写だけで観客の没入感を操作できる!)これぞまさしく時間芸術。

エーリッヒ・フロムは愛の条件として「配慮」「尊重」「責任」「知」の4つを挙げる。本作のテーマである「人を知ろうとすること」。これこそまさに愛の条件の1つである。とすれば、本作で描かれているのはフリーレン始め彼らが愛することを学ぶ旅路である。

【以下後半】
ただし途中からはイチャイチャやらバトルやら、単なる青年漫画の範疇を超えることはなかった。(ep.27「人間の時代」はフリーレン世界のリアリティを補強する内容で実に良かった。)

フリーレンの所作や思考がヒンメル由来であることを示す描写がちょいちょい出てくるが、こういうのがもっとあれば良かったなと。
鑑賞者

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