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葬送のフリーレンのbluebeanのレビュー・感想・評価

葬送のフリーレン(2023年製作のアニメ)
4.5
勇者が魔王を倒した後の世界から物語が始まるという、いろんな意味で今の時代を象徴する設定が見事です。1000年以上の寿命をもつエルフが主人公ですが、その目を通してみる人間関係の儚さは、固定した共同体が無くなった現代を生きる自分にはとても共感できるものでした。

抜群なキャラクターデザインと人物の動きの演出で、見ていて気持ちが良かったです。今っぽい激しい戦闘シーンの作画も実際にすごいのですが、そういうシーンの頻度は低めです。そのかわり多くの場面が微妙な人物の仕草や表情で表現されていて、省エネながら質の高いアニメーションになっていると思います。それと背景の色みが個人的にすごく好きです。空のグラデーション、例えば空の青と夕日のオレンジなんかが本当に美しかったです。

たびたびヒンメルの言葉を思い出すフリーレンをはじめ、他人から言われた些細なことが心に積み重なって、その人のその後の人生を形作っていくという描写が多いです。一人一人の人生は短いけど、知識や思いを積み重ねて進化していく人間の時代がくる、という流れが、儚く短い人生への救いとしてのメッセージになっている気がします。

2クール目は急にハンター試験みたいな少年漫画的展開になりますが、それはそれで面白かったです。参加者たちが個性を生かして、馴れ合いではない協力体制を気付いていく様子は、会社でもこんな風に仕事がしたいなーと思ってしまいました。

本作の世界では魔法は術者のイメージによって無限に力が増すという設定です。それを見て、最近は直感やセンスみたいんなものが軽視されて、理性とか論理がより重視されている気がするな、と改めて思いました。そして本当にそれが正しいのかな?と考えるきっかけになりました。

どうでも良いですが、フリーレンを最初見た時、ナデシコのホシノルリに雰囲気がかなり近いなと思いました。
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