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戦隊大失格のslowのレビュー・感想・評価

戦隊大失格(2024年製作のアニメ)
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特撮ヲタク向けではなく【アンチヒーロー】×【潜入スパイ】×【異能力バトル】好きな人向け。
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{あらすじ}
戦隊ヒーローと怪人軍団が実在する世界。
しかし、長年の戦いは八百長だった!?
ヤラセに嫌気が差した怪人戦闘員Dによる無謀な“反撃”が始まる!

…話の作りが最初から面白い。

本作は戦隊ヒーローや特撮モノをテーマにしてるように見えるが、あくまでこれらは飾りにしかすぎず、どちらかと言うと「怪人側のドラマ」が主体。

戦隊ヒーローに限らず、ウルトラマンや仮面ライダーなどに登場する敵役に愛着がある人なら本作で描かれる怪人たちの可哀想な扱いに心を打たれる事間違いなし。

弱者が悪知恵を働かせて勝ち上がるタイプなので、なろうのジャンルでたとえると「ざまあ」「成り上がり」系である。

「世界観や設定に無理がある」という冷ややかな意見もあるが、これは世にも奇妙な物語のような奇妙な世界で紡がれる話なので、そういったリアリストにはささらない作品だと思う。

主人公のポジションが複雑な立ち位置なうえにさらに複雑化し、話がスピーディに展開するタイプなので複雑な話が苦手な人にも向いていない。

また「異能力バトルモノ」と言っても主人公の能力は「化ける能力」に特化しており、変身のバリエーションは多いものの、変身能力に面白味を感じない人にも向いてない。

【特撮ヒーローモノに中指を立てた“逆張り”作品】

本作は特撮ヒーローに対するリスペクトはありません。どちらかというと真逆の精神。
嘘で塗り固められたニセのヒーローに疑いも持たず、踊らされる視聴者たちの愚かで恐ろしい姿、世論や場の空気に流されて特定の集団に罵声を浴びせる哀れな大人たち、そういった特撮ヒーローモノに根付く「美化された正義」「差別意識」に一石を投じたアンチヒーロー作品なので、「そういう逆張り精神は要らない!」「シンプルな正義対悪が見たいんだ!」といった懐古厨が多い特撮ヲタクには全くささらないんじゃないかと。

本作を好きになる人はヒーローよりヴィランが好きな人だったり、ヒロインより負けヒロインのほうが好きといったひねくれ者だと思う。
実際、本作が大好きな私自身もヒーローより怪人が大好きなひねくれ者だったので。

【アニメと原作の比較】

アニメは第一話の時点から原作の時系列を入れ替えて作られており、セリフ量も削って情報量も原作より軽く作られてます。

原作では戦闘員Dの動きが行ったり来たりの迷走状態でしたが、アニメではDの動きを一本の流れとして綺麗に作り替えており、キャラクターの表情変化やキャラの個性を倍増させたアニメ独自の演出、意味深なカメラワークなど原作には描かれてなかった部分の増強が多いので、原作の補完としても機能してますし、逆の立場だとしても、アニメがカットした原作のセリフから明かされてなかった情報を知ることができるので、Win-Winの関係性が出来上がっています。

・アニメ…原作のとっ散らかった内容を綺麗に整理整頓し、キャラクター性をより強めたもの。
・原作…尺の都合上、アニメ版がカットした情報や設定を補完するもの。

どちらから先に見ればいいか迷ってる方はいらっしゃると思いますが、個人的には綺麗にまとめられたアニメ版を先に見て、アニメがカットした細かい情報は原作で補完する、という流れが一番ベストかなと感じました。

※ただし、アニメは中盤から作画が劣化しますので、絵柄の劣化が気になる人は終始ずっと綺麗な絵で描かれてるマンガ版がオススメ。

では、これからも引き続き、戦闘員Dの奮闘劇を応援したいと思います!
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