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新世紀エヴァンゲリオンのmizukiのレビュー・感想・評価

新世紀エヴァンゲリオン(1995年製作のアニメ)
4.9
(シンエヴァ公開前に書いたもの)
一回みただけでは理解させない計算高さ。見れば見るほど視点が変わり、初めはよくわからなかったシーンひとつひとつが必要なシーンで、辻褄が合うように巧妙に作られている。嫌悪感をもったり意味がわからないと思ったシーンを深掘りすれば、必ずどこかのシーンに繋がる。繰り返し、同じ概念を違う形で表現するのが庵野さんなのだと思う。個人的には、全て愛について表現していると思っている。自己愛や隣人への愛、エディプスコンプレックス。抑圧されることの多い感情が露になることで解放されて救われた気がしたり逆に嫌悪感を抱いたり。作品を見る側の感情の隆起すら庵野さんのシナリオ通りなのかもしれない。
 生きるのが下手な人間を肯定する側面もあって、そういう人間からするとこの作品があって良かったと思う。わかる人間にだけわかればいいものがたくさん盛り込まれているのに、美しいカットの構図、進化論、宗教などで覆い隠していて、覆うものでさえちゃんと手作り。
 庵野さんは、大事なものは簡単に見つかるところに置いておきたくないんだろうな。わかる。べらべらと口外することはない、きっとその言葉を欲していない人の耳に入るのが嫌だから。

(2021年10月21日現在)
アニメ、漫画、映画、監督のドキュメンタリーをみた上で、気持ちは変わらない、エヴァが好き…一生庵野秀明。庵野さん的には、エヴァンゲリオンのプロジェクトを立ち上げた時点で一度それなりに自分の中で蹴りがついていたことを、最初から描いていたのだと思う。でも専門的に言うと、うつ病には完治が存在しない。「寛解(症状が見かけ上消失した状態)」しかない。いくら庵野さんの頭の中で「逃げちゃダメだ」とわかっていても、人間はそんなに単純ではない。何度もボロボロになっては逃げるしかなくなったから、きっと終結に20年以上かかったのだと思う。庵野さんにとってエヴァは全肯定すべきではない鬱世界、でもどうしても帰ってきてしまう世界。だから、エヴァの世界をただただ肯定していた、第一の消費者であるファンには複雑な思いがあったんじゃないかな…とにかく、あのようなものを描ける繊細な人間が今まで死を選ばなかったこと、エヴァを終わらせたことは凄すぎる。生きててくれてありがとうございますの気持ちでいっぱい。
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