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新世紀エヴァンゲリオンのsgrのレビュー・感想・評価

新世紀エヴァンゲリオン(1995年製作のアニメ)
4.7
<自分なりの考察>
ずっと観ていなかった本作をやっと視聴。結果、とても良かった。
・本作の主題は、おそらく「思春期の少年少女のアイデンティティの確立」である。それを中高生に伝える時の方法として庵野監督はロボットバトルのSFを選んだんだろうけど、結局最後の2話はダイレクトに、自由とは?生死とは?生きる目的とは?自分が自分/他者を知覚するとは?みたいな重要な哲学テーマに触れつつ、様々な例(碇シンジの場合、綾波レイの場合、みたいな)を通して、視聴者本人にアイデンティティを問うような構成になっていた。庵野監督が本当に作りたかったのはこの2話だけなんだろうけど、それまでの話があったからこそメッセージがすっと入ってきた。
・これらのメッセージを中高生たちに伝える時に、結局ミサトとか大人でも、心に穴を抱えながら生きているってことを伝えてるのも良かった。思春期の子からしたら大人も同じなんだって安心するし…。
・アイデンティティを語る上で親の存在は無視できないから、父と息子の関係、父と娘の関係、母と娘の関係、母と息子の関係の全部に触れられてたのも良かった。描かれていた関係自体は歪だけど、本質に近いものを表現してると思った。
・エヴァって何だろうって考えた時に、エヴァ=母親のメタファーだと思った(実際、エヴァにはパイロットの母親の魂が宿っていることが作中で判明)。
エヴァ内が一番安全だと作中で言われていることからもわかるように、エヴァのパイロットは一見危険に晒されているように見えて実は母親に守られていることがわかる。
エヴァのパイロットが使徒と戦うことは、「14歳の少年少女が母親の庇護を受けつつ、困難に親の力を借りて立ち向かう」ことを表現していると思う(実際、シンジは母親の魂が入ってるエヴァに乗って実の父親から指示を受けて戦っていた。)。
シンジが使徒との戦いを重ねるごとに、最初逃げそうになっていたところが、成長して自信を持ち出したり、父に反抗したりと、さまざまな困難に立ち向かう過程での14歳の心理がうまく描かれていた。
アスカが大人になる(生理が来た)ことによってシンクロ率下がったことからも分かるように、多分大人になったらエヴァは乗れなくなると思う。エヴァに乗れなくなったことによってアスカは何もできなくなってアイデンティティを見失っていたけど、それは多分誰もが思春期に通る道で、それを乗り越えてやっとアイデンティティが確立するんだと思う。
・本作は思春期の少年少女に対する強いエールを感じた。特に碇シンジの解像度がとても高く、実際にモデルがいるのではないかと思うほど。もしかして、庵野監督の少年時代…?
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