やまもとしょういち

ブギーポップは笑わない Boogiepop Phantomのやまもとしょういちのレビュー・感想・評価

3.8
『serial experiments lain』(1998年)と『妄想代理人』(2004年)のあいだの時代の物語、として見た。

この2作と共通する20世紀的な社会の成熟の果てに登場したインターネットがもたらす不安、社会を覆う強迫観念のようなもの群像劇として描き出しているのだが、あえて中心を欠いた構成、いたずらに観念的なセリフによって「物語」として成立しているかは疑問だった。いや、安易に「物語」に回収させなかったからこそ、散り散りの人々の姿、各々の感情を描き出せたのかも、と少し時間をおいて思ったりもした。

ともかく、そうやって描かれた時代の空気や人々が心の内に抱えていたものは、いま見ても生々しく響く。ある部分では、オウムのトラウマで引き裂かれた時代の人々をうまくとらえていると思う。