青の

SHIROBAKOの青ののレビュー・感想・評価

SHIROBAKO(2014年製作のアニメ)
4.0
【 万策は尽きない! 】

悲しくてやりきれない、そんなニュースを見て真っ先に今作を思い出しました。


全24話、完全オリジナル作品。
アニメ制作現場のリアルを描いた、いわゆる「お仕事系」アニメ。

作画や演出、制作デスクの労苦。
迫る納期の中で如何にクオリティーの高い作品を目指していくか?
7割「業界あるある」で、後は大袈裟にドラマティックに描かれているとの事。

実在のクリエイターや声優さんが名前をもじってモブキャラとして登場します(殆ど内輪ネタ。知らなくてもオケ)。
あるいは実在のアニメ作品やポスター等、それらを見つけるのも楽しい。

「こんな苦労の末に、あんな素晴らしい作品が生まれるんだ!?」と再確認できるし、「こうやって作画崩壊になるんだ…笑」とアニメファンや業界に興味がある方なら必見の良作です。

※ただし、なんせ『10年前の』制作現場です。
今作では次から次へと問題が発生して、ハラハラが止まりませんが、そこはドラマティックな演出なので現在とはだいぶ労働環境やシステムも変わっている様です。
話し半分、もしくは「昔はそうだったんだね」くらいが良いかもしれません。

ちなみに『シロバコ』とは、画も音も全てパックされて完成したテープ(現在はデータ)。
制作会社だけが1番に手にする事ができる、白い箱に入ったテープを指すのだとか。


【 以下、一部ネタバレがあります 】

























—以下、一部ネタバレ—

作中半ば、舞台となる制作会社がまだ最終回が描かれていない人気漫画をアニメ化するという回があります。
(原作物のアニメ化、ドラマ化の「あるある」に切り込んだ重要なエピソードです)

原作漫画では最終回は描かれていないが、アニメ制作会社はクール内で物語を収めるべく、アニメオリジナルの最終回の脚本を作成。


アニメ制作サイドは原作者の許諾を得る為、原作者との間に入っている「担当者」に脚本を提出。

「担当者」はOKを出し、アニメ制作は最終回に向け動き出し佳境に。

ところが納期直前になって担当者を通じて「そのラストはありえないと原作者が言っている」と連絡が来る。
ダメ出しされてしまう。

担当者は「良いと言ったのは個人的な感想だ。原作者はダメだと言っている。とにかく脚本をやりなおせ」の一点張り。
(脚本家と原作者を会わせるとモメるから、なるべく接触させないと言う悪習が現在でもあるのだとか)

納品間際でのちゃぶ台返しに制作現場は大混乱に。
アニメ監督は直接原作者と話がしたいと、原作者のいる出版社に乗り込むことに…。



原作者が魂の限りを尽くし産んだその作品を預かるならば、愛とリスペクトをもって制作するべきだと、このエピソードで改めて痛感した。

今作では分かりやすく戦犯が設定されているが、きっと原作物とメディアミクスにおける齟齬は日常的にあるのだろうなあとも感じた。

業界を知らぬ素人なりの「祈り」かもしれないが、できるだけ互いに同じテーブルに着き、顔を見合わせての打ち合わせをして欲しい。
いわゆる挨拶レベルの「顔合わせ」ではなく、契約に準ずる程度の緻密な打ち合わせを、とにかく話し合いを。
そして、人生をすり減らしてゼロから生み出された作品を大事に扱って欲しい。



—〆—
分かる人にだけ伝われば良いみたいな、稚拙な文面で申し訳ないです。

とにかく今作は面白いと思います。
アニメ業界に興味が無くとも、夢や希望や挫折、仕事に対するモチベーションなど、なにかしら岐路に立つ人には響くかもしれません。

ただ、カーチェイスいる?とか高梨太郎が我慢ならんとか、通好み過ぎるとか、全話耐えられない人がいるのも理解できます。
こればかりは好みですね。
(ちなみに高梨太郎は本作の監督がモデルとのこと)

他の方も仰られていましたが、2期があるといいですね。
よりリアルな、現代らしい制作現場が見てみたいです。
青の

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