もこもも

夏目友人帳のもこもものレビュー・感想・評価

夏目友人帳(2008年製作のアニメ)
4.8
"騒がしくも穏やかな夏目の日常を描いた心温まる名作アニメ"

小さい頃から妖怪が見える夏目
祖母レイコが妖怪を子分とする証に
その名を書かせた友人帳を継ぎ、
自称用心棒の妖怪・ニャンコ先生と共に
妖怪達にその名を返す日々が描かれている
基本1話完結やけど、その1話1話がとても素敵
癒しと温かさとちょっと寂しさを感じて
大切なものとして自分の心に残った
1日2,3話のゆっくりしたペースで観たけど
この作品は一気観よりゆっくり視聴がお勧め

この作品の魅力は
だれでも受け入れられる絵と
キャラクター、そして舞台設定かな
自然多き田舎の風景が世界感を確立して、
ノスタルジックな雰囲気が漂っている
この舞台設定が繊細な心情を
より効果的に表現していて、
人の温もりや懐かしさを深く感じれた

妖の存在もこの作品の特徴であり魅力
人間と見た目が違うだけで、
人以上に純粋で真っ直ぐなところ、
相手のことを大いに思いやっていて、
この妖の存在によって感情の表現に
より美しさを感じることができた

本物の悪い人や妖が出てこない
優しい世界が描かれているところも大好き
悪霊に近いものも出てくるけどそこには背景があるわけで、的場一門もただ悪者とは言えなくて、夏目を虐めたり腫れ物のような扱いをした子供や大人達も客観的に見れば一方的に悪とは言えない
なにより夏目の周囲の人と妖は優しさに満ち溢れてて、そういったところもこの作品の素敵な魅力

どんなに心を通わせても、
人間はあっという間に死んでいなくなる
そんな人間の儚さと切なさが根底に流れている
いくら見たいと思っても、いくら見て欲しいと思っても人と妖怪の越えられない壁に寂しさを感じ、人と妖の壁や時が流れる速度の違いが寂寥感となってこの作品の深みとなっていた

「人を嫌いにならないでいてくれてありがとう」

「優しいものは好きです
 温かいものも好きです
 だから人が好きです」

「冬の足音が聞こえる秋の夜
 でも、ここは温かい…」

人とか妖怪とかじゃなくて
大切な存在がいることの素晴らしさ
自分にとって大切なのかどうか、
その瞬間の大切な想いと幸せを
心のまま素直に迷うことなく
受け止めれる人間でいたいなぁ

⚫︎キャラクター
特にヒノエと塔子さんと夏目が好き

・ヒノエ
夏目が大好きなところ、かっこよさと可愛さを感じれる性格、ぶっきらぼうなようで優しさが沢山含まれる話し方が大好き
「守ってやるさ
 弱いお前が呼ぶのならしょうがないねぇ 
 しょうがない...
 気に入ったんだからしょうがないさ」

・塔子さん
本当に好きすぎる
その全てを包み込んでくれる温もりと優しさ
安らぎを感じる声と可愛い仕草に心を奪われる
自分にとって第二のお母さんのような存在

・夏目
この物語の主人公である夏目は苦しんだ過去があるのに人も妖も嫌いになれない、そんな心の優しさを持った青年
ただ優しいだけじゃなくて、寂しさを知っているところが感情移入してしまう要因だった
妖や人の為に協力したり努力したり、大切な人に心配させまいと無理をしたり、友人や藤原夫妻に見せるようになっていく笑顔だったり、夏目から感じる人間らしさが素敵

"出会いと別れ"と"大切な存在"が
この作品の大切なテーマになっていた
その視点で作品を語らしてもらおう

【出会いと別れ】

いっぱいの出会いと別れが描かれて、そのどれもが素敵な出会いで、優しい世界がこの作品では描かれている
1人の人を大切に想い続ける妖もたくさんいて、人と妖の時の流れの感覚の違いも相まって大いなる愛おしさを感じる
人にも妖にも嫌われて苦しんだ子供時代
小さい頃から見えることのつらさ苦しさをたくさん受けて来た夏目
そんな夏目だからこそ友人、妖、そして藤原夫妻との出会いが宝物のようにかけがえのない大切なものであることを強く感じる
「見たもの 感じたもの
 それは...ずっと消えない 忘れはしない
 様々な出会いとともに」

【大切な存在】

・友
転校してから最初に夏目と友達になった西村と北本
妖が見えることを理解してくれる田沼と多軌
アニメでは準レギュラーで委員長の笹田
後ろで支えてくれる人がいなかったから自転車に乗れなかった夏目に乗り方を教えてくれて、楽しい思い出を共有して、心配して、夏目を大切な友として思いやってくれたみんなにただただありがとうと

・祓い屋
名取さん
最初は名取さんのことを不審に思ってる部分があって、妖に対する考えた方で分かり合えない部分はあったけど、
名取さんがだんだん夏目を大事に思って、夏目も名取さんをだんだん大事に思って本当の友達になっていく様子に心が温かくなった

・レイコさん
この世にはいないけど、妖の記憶の中で登場する夏目貴史の祖母にあたる人物
れいこさんは強い、なにより心が強い
強いからこそ1人の道をえらんでしまったのかな
でも妖との繋がりは確かにあったわけで、レイコのことが好きな妖がいっぱいいて
登場するレイコさんはいつも凛としていて強かな印象やけど本当はどういう気持ちだったんだろう
人とも妖とも必要以上に繋がりを持たず、いろんなものから距離をとりすぎて人と妖の優しさに気づかなかったのか、気付きたくなかったのか
いつも高校時代のれいこさんが登場するけど大人のれいこさんはどうなって、どんな人と結婚したのかはやっぱり気になるな

・妖怪
ニャンコ先生
食ってやるとか友人帳を頂くとかいいながらいつもピンチには助けにくるし、夏目のことを理解して心配して
不器用やけど優しさに満ち溢れている最高の相棒
優しさを上回る食欲の強さも丸っこいところも声も大物の妖やのに皆からいじられるところも全部可愛い
七辻屋の饅頭食べたいなぁ

・犬の会
一つ目の中級妖怪、牛の中級妖怪、ヒノエ、チョビ、三篠、紅緒、カッパ
犬の会のみんなが大好きすぎる
夏目のお願いを快く引き受けるところ、夏目のために赤い木の実を探したり、熱を治すために頑張るところ、なにより夏目のことが大好きなところが本当に観ていて幸せになる
最初レイコさんは妖にとって大切な存在なんだなぁと思ってたけど、いつの間にか貴志も多くの妖にとって大切な存在になっていることに嬉しさと同時に胸の温かさを感じた

・藤原家
嘘つきで奇行に走ることがある子として腫れ物のような扱いを受けてきた子供時代
両親を亡くして親戚の間を転々としてきた過去
そんな夏目にとって塔子さんと滋さんとの出会いはどれほど温かくて輝いたものだったのだろう
最初は距離感がわからなくて、戸惑ったり遠慮したりしていたけど、人と妖の優しさを知り、周りの人との関わり方を少しずつ変えていくことで家族のようになっていって...
優しくて温かい大好きな人いる場所、ずっといたいと思える場所、そんな場所に出会えた夏目を想うだけで涙が溢れる
優しくされるから自分も優しくしたいと思えるのだと

全シーズンのOP.ED.挿入歌に至る
すべての楽曲が至高の名曲やった
『ARIA』以来に好きな曲を選べない程すべての曲が素晴らしい作品と出会った
1期のOP.EDの組み合わせを聞くと懐かしさを感じてこれが夏目友人帳とも感じるし
2期,6期のEDで泣きそうになったりもする
全曲プレイリストに入れて度々聴いてる
特に好きな歌詞は2期ED『愛してる』の歌詞で、歌詞と夏目を重ねて涙が滲んでしまう
「愛している 愛している
 世界が終わるまで
 馬鹿げてると笑いながら口に出して見て
 愛している そんなことが
 簡単にはできなくて
 うまく愛せるようにと
 あの空に祈っている」

好きな話を挙げたらきりがないので
ここでは個人的大好きな3話を記載
(他の好きな回は各シーズンに記載)

⚫︎1期2話『露神の祠』
いつもひとりぼっちだからと子供の頃からずっとお参りしていたはなさんとそれを見守り続けた露神のお話

1番最初に感動した話で印象に残っている
独りは寂しい、独りは苦しい
人間を愛して、ずっと見守って、
人間は可愛いと言う露神が大好き

「一度愛されてしまえば、愛してしまえば、
 もう忘れることなどできないんだよ」

⚫︎3期4話『幼き日々に』
個人的に一番好きな回かも
人に見られず独りでいることの寂しさを知っている木の上の女妖怪と、妖怪が見える、ただそれだけで人から嫌われる夏目の幼き日の物語

人から見えなくても驚かすくらい元々人のことが好きなんだろうなぁと、だからこそ人から見られるず孤独感に胸が痛くなる
そして夏目にみてもらえることにどれだけの喜びを感じたのだろう、見てもらえるのが嬉しくて夏目を脅かすことを楽しんでいる女妖怪

夏目と関わるうちに夏目の悲しさと優しさに触れる女妖怪
「1人で生きていきたいなぁ」と心から願う夏目にも、1人でいることの寂しさを訴える妖の涙にも心が熱くなる

人間の嫌な部分を見て一人の方がいいと感じながら季節を巡る木の上の妖怪、そして季節が移りゆく中、今の夏目が目の前に現れたときの嬉しさは言葉にできないだろう
「いまならあなたのやさしさが分かる気がするんだ」と夏目の成長にも胸が打たれる

妖からしたらあっという間のことなのかもしれないがそれでも何年も忘れずに夏目のことを考えて想うその気持ちは紛れもなく美しくて尊いもので、もう一度出会えて本当によかった
叶うなら2人がずっと一緒にいてほしいと

「いまなら思う 会いたい人がいれば
 きっともう1人じゃないこと」

⚫︎5期10話 『塔子と滋』
塔子さんの晩御飯は任せますって言われた時の
「もぉ、また逃げるー」って言うところも
水族館に誘うところも鴉に大声で話しかけるのも
1人でいる鴉を心配しちゃうのも
旅館で髪を下ろしている姿も
寂しがり屋になったと思うところも
滋さんの横に寄り添って座る姿も
その全部が愛おしい

「幸せがこんなにも静かに静かに
 2人の上に降り積もって
 不思議ね、滋さん
 寂しくって早く会いたいわ」

「いつかあの人を喪う日が来たら
 私は生きているのかしら?
 いつか私を失っても
 あの人は生きていけるかしら?」

2人が理想の夫婦すぎる
こんなに穏やかで幸せな日々を積み上げれる人と
自分もいつか出会えたらいいなぁ

滋さんも夏目のことを見かけてから
長い時間1人でずっと真剣に考える姿から
思いやれる人やって伝わってくる
夏目を迎え入れてからも心を閉ざしている
夏目に対して優しく守っている2人
鴉のシーンで白い鴉が見えるってことは死別しているという意味で、そこには悲しさより死別してもなお寄り添い続ける2匹の鴉に心が温かくなった
なにより最後の塔子さんと夏目さんの2ショットで完全に涙が溢れた

本当にこの作品と出会えてよかった
7期も楽しみに待っている

「人にはできないことが多くて
 それを忘れやすい
 だからこそ、そばにいたい
 そばにいてほしいと願って
 それが叶う貴重さを 
 みんな噛み締めて生きてるんだ」

⚫︎1期
OP : 喜多修平『一斉の声』
ED : 中孝介『夏夕空』
⚫︎2期
OP : LONG SHOT PARTY『あの日タイムマシン』
ED : 高鈴『愛してる』
⚫︎3期
OP : HOW MERRY MARRY『ぼくにできること』
ED : 中孝介『君ノカケラ』
⚫︎4期
OP : ひいらぎ『今、このとき。』
ED : 河野マリナ『たからもの』
⚫︎5期
OP : ササノマリイ『タカラバコ』
ED : Aimer『茜さす』
⚫︎6期
OP : 佐香智久『フローリア』
ED : 安田レイ『きみのうた』
もこもも

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