先にダイジェストの劇場版を観て、このオリジナルテレビ版に遡ったけれど、やはりこちらが断然いい。個々人の成長の過程の一歩一歩が丁寧に積み上げられていくから物語の土台が確固としている。一人ひとりの個性にリアリティがあってこそ安心して物語に没入できるのである。ここには一人も”天才”なんかいなくて、それぞれの中にある未熟な部分とちゃんと向き合い、努力によって壁を乗り越えていく。それは自分でも知らなかった自分を知る過程でもある。己の強さも弱さも限界もぶつかった者にしか知ることはできないし、努力しない者には悔しがる資格なんかない。徹底的に絵空事の嘘くささとは無縁であり、だからこそ私たちは真に心を動かされてしまうのだ。少し気になるのが女子生徒が必ず頬紅く内股に描かれていて不自然で、可愛く描きたい以上にあまり意味がなさそうなこと。少女性だったり自信なさの婉曲表現と見ることもできそうだが、それならば少なくとも高坂麗奈と田中あすかの二人は真っ直ぐに立って描くべきだろう。それと新入生を歓迎する吹奏楽部の最初の演奏が下手で、全国を目指すと目標を掲げる部活のものとは思えないレベルなのもやはり気になる。
