めしいらず

響け!ユーフォニアム2のめしいらずのレビュー・感想・評価

響け!ユーフォニアム2(2016年製作のアニメ)
3.8
劇場版でなく、やはりこのテレビ版を観なければ意味がないと思う。劇場版は様々な要素を削ぎ落として一番見せたいものに焦点を絞った潔さがあったけれど、その削がれていた部分があってこそ厚みのあるドラマ性が感じられるし、その一つ一つに堪らない気持ちにまでさせられる。何も特別でない少女たちのどこにでもある青春の1ページ1ページがこんなにも煌めいて見えるのは、当事者に寄り添って見れば誰のどんな人生も一人一人にとっては必ず特別であることの証左だろう。脇役なんて一人もいなくて、みんながそれぞれの人生において主役であり、それぞれにドラマがある当たり前。そう感じさせてくれる個々の丁寧な描き込みがあって初めてこれほどのエモーションが生まれるのだと思う。競技に必ず付いて回る喜びにも悲しみにも悔しさにも葛藤にも作り事めいたところがまるでない。何ら特別でない少女たちが、惜しみない努力の積み重ねによって特別になろうと諦めずに取り組み続ける姿は、ただそれだけで感動的だ。個人的なことであるけれど、部活でも勉学でも何でも順位づけが生じる物事に距離を置いて生きてきてしまったことを、何か一つでも一生懸命になり切れかった後悔を改めて痛感させられてしまった。一生懸命になれない者には悔しがる場面も嬉しがる場面もなくて、ただ灰色に曇った毎日が続いている。それもまた人生の一つのありようではあるけれど、やはり後悔少なく生きたかったと思ってしまうのも人の心の必定だろう。だから夢を諦めた後悔を抱えて生きていた姉の行く末を目の当たりにした主人公クミコが、退部を決めた先輩アスカにはそうなって欲しくないと無様に詰め寄り翻意させる場面が感動的。他人を思って涙を流せる人は美しい。そして府大会の場面の選抜メンバーの演奏の素晴らしさと共に、選抜に漏れた残りの部員たちが一体となって見守っている様子に胸打たれて、個人的にはそこがハイライトだった。また回を追うごとに実際に演奏が上手くなっていくように聴こえるのが、当たり前のことではあるがちゃんとできていて隙がない。演奏そのものの説得力がなかったら何もかも台無しになってしまっただろう。それとこの手のお話には必ず付きものであるだろう恋愛劇的な部分が、出しゃばらない程度に控えめ(全くないとそれもまた嘘っぽい)なのも個人的には好感触。凡百の作り手なら、部活と同等もしくはより強調して描いただろうと思う。
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