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スコット・ピルグリム テイクス・オフのMASHのネタバレレビュー・内容・結末

4.5

このレビューはネタバレを含みます

最高のコミックからまぁまぁな実写映画を経て、ついに念願のアニメ化。スコット・ピルグリムの独特な世界観はアニメシリーズでこそ映えるだろうと常々思っていたので、期待値MAXで鑑賞。が、まさかの原作のアニメ化ではないという。事前に告知されていたかは定かではないが、かなりチャレンジングなことをしたなという。

そしてこれがビックリ、新たなスコット・ピルグリムの物語として最高のものに仕上がっているのだ。ifストーリーでもあり原作の続きでもあるという、まさに原作のメタフィクション的な世界観をストーリーそのものに活かすという。僕が観てきたコミックの映像化作品の中で最も刺激的な体験だったと言える。

「テイクス・オフ」とはよく言ったもので、1話目にして主人公であるスコット・ピルグリムがいなくなるというトンデモ展開。その代わり、原作ではそこまで描かれていなかったラモーナと元カレ(カノ)たちとの交流が描かれる。これがまた素晴らしい。出オチに過ぎなかったキャラたちが、ラモーナを通して愛すべきキャラへと変わっていく。単にストーリーを変化させただけでなく、これにより更に原作への愛も深まっていくのだ。

中盤で原作をメタフィクション的に扱うというジョークがメインになっていくのだが、それがただのジョークとして終わっていない。それらをこの作品の「過去の後悔と未来の不安と向き合う」という主題として扱っていく。終盤のこの流れは本当にお見事としか言いようがない。

ほとんどが新たな試みではあるが、ちゃんと『スコット・ピルグリム』の作品と感じられる。オフビートな雰囲気、シュールな展開、日本のアニメやゲームへのオマージュ満載のハイテンションなアクション。そして「過去と向き合う」というテーマ。原作の魂を失うことなく、全く新たなことにチャレンジをしている。中々できることではない。

ただ一つ気になるのが、原作を知らない人が観たらどう思うんだろうということ。あくまで原作を読んだことがある人、もっと言えば原作が好きな人には刺さるだろうが、それ以外の人はやや置いてけぼりを喰らうのでは?

まぁ僕は原作ファンなのでこれ以上なく楽しめたわけだが。 原作をそのままアニメ化してくれるだけでも十分嬉しいのに、まさかこんな形でアニメ化されるなんて。ファンからしたらこれ以上ないサプライズ。

原作に対するifストーリーでもあり、同時に続編でもあるという無茶苦茶な展開を、8話という短さの中で見事にまとめ切っている。単なるファンサービス以上の、一作品としてこれまでにない体験を味合わせてくれた。原作改変につきまとうマイナスイメージを吹き飛ばす、アニメ作品のゲームチェンジャーとなり得る作品だ。
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