普段あまり自ら進んでテレビアニメは観ないんだけど、この作品だけは自分の嗅覚が「絶対に見ろ!すごい作品になるぞ」と訴えてきたので観た。
恋愛モノにおける「報われないヒロイン」(通称:負けヒロイン)にフォーカスを当てた作品で、優しすぎる主人公の周りにその負けヒロインたちが集まってくるという話。
まず、映像の滑らかさ、柔らかい質感、そして映画のような凝った演出に感動する。実写作品を観ていると錯覚してしまいそうになる瞬間もある。常に劇場アニメのクオリティで衝撃だった。
タイトルで『負けヒロインが多すぎる!』と銘打っているように、魅力的なキャラクターが非常に多い。彼女らの負けヒロインたる負けっぷりや、そこからの奮闘っぷりを見ていると感情移入してしまって、気付いたら応援している。
一方で、主人公の温水が陰キャ童貞すぎて、全く恋愛に発展しなさそうなのも良かった。下心なく親身になって相談に乗ってあげてるから、そこにはただただ純粋な男女の友情があって、美しい青春学園ドラマが展開されていた。文芸部の設定もきちんと機能している。この作品を最後まで安心して観られたのは、ほとんど彼のおかげだと思う。
ってかもう温水は女の子だよね。少女。美女。Girl。Lady。Woman。温水には間違いなくアソコが付いていません。回を追うごとに少女化していってて可愛かったですね。温水が一番のヒロインですよ。逆に八奈見はおっさん化していってたのが面白くて親近感あった。
本来ならラッキースケベやお色気とされている展開ですら、主人公に性欲が無さすぎるから一切ドキドキしなくて、むしろ「いらないだろ、この描写!」とメタ的に笑えるのが本当に凄い。この題材ならではの視点でギャグとして昇華していて、これまでの恋愛モノが全てフリになっているようにすら感じた。
それにいくら負けヒロインにフォーカスした作品だからといって、恋が実った側(勝ちヒロイン)を徐ろにすることもなく、なんならそこの複雑な関係性にもしっかり目を向けているのが美しい。勝ちヒロインには勝ちヒロインなりの苦悩や挫折があって、決して悪者を作らないようにしているのが好き。
この作品には邪な描写がほとんど無くて、みんなが真摯になって真正面から向き合うのが堪らなかった。ただただシンプルに良いアニメ。毎週の支えだった。ぜひ2期もやってほしい。