こたつむり

ヴァイオレット・エヴァーガーデンのこたつむりのレビュー・感想・評価

3.5
まさに尻上り。
正直なところ、最初の数話は高評価を疑う凡庸さ極まりない展開で、類型的なキャラクターにも少し辟易していたのです(胸元を強調する外観とか)。

しかし、それは終盤に至るまでの布石。
「届かない想いなんてない」と言わんばかりの愚直で丁寧な筆致に、気付けば涙腺は崩壊寸前で、平然と観ている家族に「人の心が無い」なんて暴言を吐きたくなる始末。完全に撃ち抜かれました。

ターニングポイントは第7話。
この辺りからググっと面白くなりました。それまでは、奥歯にものが挟まったような違和感が気持ち悪くて。なんだか“きれいごと”に思えたんですけど、変われば変わるものです。

特に透明感の絵柄が逆に作用していました。
瞳の彩色はセンスを感じたのですが、世界が全て澄んでいるなんて嘘も嘘の大嘘ですから、それを払拭する工夫が必要なんです。それが序盤には足りないのです。

やはり、綺麗なものを描くならば汚いものも描かないと説得力がありません。というか“対比”ができないから判断するのに時間が掛かるんですよ。文章ならばいざ知らず、映像主体の分野では致命的だと思います。

なので、本作はかなりギリギリの作品。
後半になれば面白くなる、という情報をどこまで信じることが出来るか…という一点に掛かっていますので。

まあ、そんなわけで。
届いた想い、届かなかった想い。
繋がる心と、消えてしまった心。
淡い光の向こうにかすむ“やさしさ”を紡いだ物語。観る側も“やさしさ”を紐解くように臨むことをオススメします。

ちなみに本作を「観たい」と言ったのは家族ですが、鑑賞後の感想は「王道」とか「少女漫画っぽい」とか「要は綾波レイの物語よね」とか微妙な感じ。なので僕も「人の心が無いのか」と暴言を吐いてしまったわけですが…。

でも、確かに、主人公の無双っぷりは極端すぎる気もしました。銃弾も容易く避けそうだものな。ひゅんひゅんひゅんひゅん(by『ひぐらしのなく頃に』)。

あと、固有名詞が長すぎます。
早口で「ディートフリート・ブーゲンビリア大佐」は舌を噛むよ。
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