メモ魔

ヴァイオレット・エヴァーガーデンのメモ魔のレビュー・感想・評価

4.4
旅ゆく人、それぞれに込められた[あいしてる]その一つ一つの片鱗に触れるたび、自分の中にある感情に名前をつけていく物語。

目に見えないもの、概念をアニメーションで表現できる最高到達点をこの作品に見た。
[あいしてる]を様々な角度から捉え、その一つ一つが魅せる[あいしてる]の色を見事に描き切った作品。

自分の中に新しく生まれた感情について、その名前が自分にとってどんな色を示すのか。それを知りたい人にとってこの作品は、今後の人生を大きく彩るキャンバスの1枚になるだろう。

総評
個人的に大のつく好きなカテゴリの映画。
捉えることが難しい形のない人の感情について、必死に知ろうと踠くヴァイオレットの姿に毎回心を打たれた。
絵のクオリティも申し分ない。いや申し分ないとかのレベルじゃない。これ以上が自分には想像できない。繊細な心を描く上でそれをひっそりと後ろから支える画力にも注目してほしい作品だ。
4.4点。
万人受けとはいかないだろう。扱っているテーマが[人の感情に手紙という形を与える]って所だから、愛情を言葉や文字に起こすことに必死になった経験のある人には刺さる内容だと思われる。どんな作品でもそうだと思うが、自分がリアルで全く経験したことのない感情は作品から接種することが難しい。それこそ少佐に怒鳴られたヴァイオレットが理由も分からず涙を流す様に。
作品で感動するのは、過去の自分に似た経験や感情に覚えがあり、それをトリガーとして作品を理解していくことができるからだ。

たまにこの作品を見て涙が出なかったと自分を責める友人を見かける。お涙頂戴展開が苦手だと言う友人もいる。
このレビューを見てくださっている方にももしかしたら同じ様な人がいるかもしれない。

そんな人はぜひこう考えてほしい。
この作品は、なにも人を泣かせに来ている作品ではない。[あいしてる]の良い側面を映す上で涙が後から付いてくるだけだ。あなたにその涙が付いてこないのは、人一倍[あいしてる]の良いところも、そして悪い部分についても熟知しているからだ。人に向けられる愛情の裏に潜むどす黒い感情を深く知っているからだ。だからこの作品を評価する時
[お涙頂戴展開が苦手だ]
なんて表面的な感想で締め括らないでほしい。[あいしてる]についてより深く理解できているのはあなたなのだから。その[あいしてる]が、より悪いところも帯びて現実味のある状態で作品として世に出るために、レビューという形で力を貸してほしい。
メモ魔

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