八咫烏

バッテリーの八咫烏のレビュー・感想・評価

バッテリー(2016年製作のアニメ)
4.2
なんてセンシティブなアニメ。。
野球部なのに、試合のシーンがほとんどない。公式戦はおろか練習試合すらなく、学校を通さないプライベート?な試合の一部分しか出てこない。
自分にとっては非常にエモーショナルで刺さったのだが、スポーツを題材にしたアニメとしてはかなり異質な作品だと思う。

天才ピッチャー原田巧と、その球に魅せられ、親の反対を押し切って野球を続けるキャッチャー永倉豪。
言いたい事は山ほどあるのだが、まずこの「天才」である巧の描き方が秀逸。
中学生になったばかりの巧は当然メンタルもフィジカルも成熟には程遠い。
本人は野球をやりたいだけ、投げたいだけで(特に序盤は)他に何の関心もない。
「才能」と自尊心ばかりが肥大した「天才」に永倉だけに留まらず、家族、先輩、チームメイト、監督、部活そのものさえも巻き込まれていく。

中盤以降描かれる、巧の「才能」に魅せられたもう1人の「天才」門脇と瑞垣コンビもまた刺さる描かれ方をしている。
幼馴染みで付き合いが長い分、むしろ主人公コンビよりも曇り具合は重傷。
重責を背負いつつも陽の光の中をまっすぐ歩んできた門脇と、野球部のない学校に進学を決めた瑞垣。瑞垣のこのネジくれた歪さが危うい。

やっと叶った試合は、結果はおろか門脇との対決もぼかしたまま終わる。
モノローグも特にないまま時間が進んでいたりするし、巧と永倉の関係性も定まっていないように見える。
この終わり方に賛否があるのは分かる。
自分は何の不満もなかったが、はっきり異色作ではある。

つまり熱い友情や、部員達の成長、試合の興奮だったりを期待してしまうと期待ハズレと感じかねない作品だ。

タイトルの「バッテリー」は、野球におけるピッチャーとキャッチャーを指す。だがこの作品は描きたいテーマの舞台がたまたま「野球」であり、もっと言えばたまたま「スポーツ」だったと思うのだ。

野球部を舞台にした作品群とは一線を画しているので、視聴に際してはその点注意が必要かもしれない。作画は素朴なキャラデザに好感が持てるし、背景がきれいで全体的に画ヂカラがある。
センシティブでエモい作品。
自分はかなり好きだった。
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