鈴木ピク

PSYCHO-PASS サイコパス 3の鈴木ピクのレビュー・感想・評価

PSYCHO-PASS サイコパス 3(2019年製作のアニメ)
2.5
少数派かもしれないが自分はサイコパス1期酷評派で、割と全アニメの中でも下から数えた方が早いくらい嫌い。

見え見えのショックを与える為に開示の優先順位を組まれた情報の微妙につじつま合ってない感。使い古された世界観やどこかで見た設定の数々。刑事も犯罪者もひたすらに頭が悪いのに無理やり箔を付けようとして、それでいて作り手の知識が薄いもんだからSF小説の有名どころを手に持ってるだけ。

「必要な勉強せずにディストピアSFに慣れてないライトな視聴者を騙そう」

たぶん時間がなかったとかいろいろ已むに已まれぬ理由はあったのだろうが、そういう態度が見え透いた作品が「新たな攻殻S.A.C」みたいな需要のされ方をしていて「ふっざけんな!」と憤っていた。
何よりこうしたストレスの原因に、演出の手が遅く登場人物がひたすら愚鈍に動くため、見ていて頭の中で粗を数える時間が存分にあったというのも大きいと思う。
そこまで賢いアニメである必要はないが、視聴者に余計なことを考えさせないくらいの最低限のスピードというものは必要だった。

対して、2期はスピード感命のような内容に。ちょっと女性に対する暴力の行きすぎ感に脚本家の病を感じはしたものの、冲方丁氏からしたら目も当てられなかっただろう1期の雑設定の粗の数々を一度白紙化させることが話の推進力になってるように思えた。
なるほどここから話を進めるなら本格派SFとして仕切り直せるかもしれない。。。
で、悪くはないけど漫然とした劇場版諸々の展開を経ての3期。

今度は脚本がー、とか設定がー、とかどうでもよくなるくらい、演出の鈍重さがひたすら悪目立ちする。
productionI.Gの悪癖であり、塩谷監督にいたってはBLOOD-C劇場版からずっとそうなのだけど、なんでこんなに演出がスローなんだろう。

そのスローさ、鈍重さがキャラに重力を、時間にサスペンスをもたらすかと言えば全然そんなことはなく、ただただ静止した虚無の時間が頻繁に訪れて緊張感を削ぐだけなのだ。
1期はこうした鈍重さの隙間に露悪趣味を入れてきて、それを「鬱展開」とか言ってもてはやすからイラついたのだが、今回は特にイラつく要素もない為、ただ漫然とした退屈な時間が続く。

肉弾戦の格闘アクションとなると途端に生き生きとして、これがやりたい監督なのかもしれないけど、普段の芝居が活きていないとアクションシーンでの飛躍が輝かないし、芝居を息づかせることはスローに描くこととイコールではない。
一話一時間という連ドラ風スタイルの冒険は支持したいけれど、間延びに繋がってしまったように映る。

ショック優先の雑設定のせいで雰囲気だけ社会派で何も描いてないに等しかった1期に比べれば、移民問題に接近していくストーリーはそれなりに見ごたえがあったが、移民側が自浄に失敗する過程を描くなら同じくらい権力の側の試行錯誤、生まれた環境に甘んじる国民からの理想への追求、あるいは自堕落な現状追認の醜悪さも描くべきで、そのためにもシビュラという設定の宙ぶらりんさを放置し続けるのにももう限界があるのではないかと思う。

移民たちがシビュラをぶっ壊しにきたので戦争になりました、抗戦が必要ですがしかしシビュラを内部から壊すチャンスなのでは。。。?そのくらいの物語とか見たい。

最期にあるキャラが死んだの?どうなの?みたいな煽りがあるんですが、いい加減(性的)マイノリティキャラにそういう役割を背負わせるのやめませんか。
鈴木ピク

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