となりの

電脳コイルのとなりののレビュー・感想・評価

電脳コイル(2007年製作のアニメ)
5.0
一番好きなアニメ作品で、5周目を最近見た。

SF的な想像力でもって、子ども目線での日常を描く。
そう書くとドラえもん的だけど、これほど近未来を描ききる作品はなかなかないだろう。

とくに、電脳空間での都市伝説の発生や、そのなんとなくおそろしげな雰囲気、不安、ノスタルジーの描き方が素晴らしい。
『攻殻機動隊』のようなSFとは異なる想像力が行使されていて、磯光雄が勉強家であることや、独特の未来志向であることがよく分かる。
(『映像研』の設定への執念にも近いものを感じる)

そのうえで、ストーリーが本当に素晴らしい。
現実と虚構の対立を軸に、電脳生物の死に痛む心の在処を問う場面は、そのままアニメを見る私たちにもはねかえってくる。
私たちもまた、目に見えるが手に触れることのできないものをこれほどに愛せる。
この事実に気づかせるほどに、キャラクターたちは愛らしく、躍動しているわけだが、それはアニメの表現力が最大限に活かされているからだろう。

デンスケやおやじの造形や、ヤサコやイサコの演技の良さ。こういうアニメーションが見たかったというディテールのよさが、設定の緻密さと同様に、作品のテーマを根幹から支えている。

また、作品の雰囲気を盛り立てる美術と音楽がまた素晴らしい。とくに、第九話の、ミチコを追いかけるイサコのシーンの背景はアニメ的な運動を可能にする空間性になっていて感動的だし、そのほかにも、せりふ回しで作画枚数を抑えつつ画面に強度をもたせているよう。そして、そうした情景をもりたてる音楽のよさ、なにより第20話での「かなしみ」はあまりにも美しい。

本当に、本当に素晴らしい。
オールタイムベスト。
となりの

となりの

となりのさんの鑑賞したアニメ