ぼっちザうぉっちゃー

ローリング☆ガールズのぼっちザうぉっちゃーのレビュー・感想・評価

ローリング☆ガールズ(2015年製作のアニメ)
4.4
これは面白い。傑作だ。
のっけから情報過多で、
『地方自治をめぐる「東京大決戦」の終結から10年がたち、都道府県がすべて独立国家となった列島が舞台』
というだけでもうどゆこと状態なのに、そこからぞろぞろ登場するのは、ご当地色を極限まで肥大化させたテーマパークのような各地域。そこを統治、自治する「モサ」と呼ばれる能力者たち。あちこちで巻き起こるご当地トラブル。
そんな戦禍を平定するため転がりまわるのは、よそ者「モブ」の四人の少女たち!
大真面目にばかばかしいようなこの感じはどこか『キルラキル』にも近いところがあるが、ポップな絵柄と豪快な作画でとにかく勢いで魅せられる。

可愛くて面白いアニメーションも気持ちが良く、生き生きとしたキャラクターの挙動は本当に観ていて楽しい。落書きかのような水彩ぽい彩り豊かな背景美術は、その所々の地域の唯一無二な世界観を賑やかに描き出しており、奇怪でありつつ愉快な気分にもさせてくれる。

そしてなによりOPやED、挿入歌が全てTHE BLUE HEARTSのカバー曲で構成されているところがもう狂おしいほど好き。センスが尋常じゃないよ。一貫したロックテイストと荒唐無稽さは、よりサイケでフレッシュにした『フリクリ』のTHE BLUE HEARTS ver.とも言える泥臭いカッコよさがある。(本家とカバーのローテーション鬼リピが止まらないぃ。)

その地域ならではの風土や特産品を利用したシナリオは馬鹿らしくもあるが、そこに生きる人だからこその土着の想いを群像劇に上手く取り込むことで奥深い内容になっている。
また、四人が場所を移動するごとに自然と新章の導入がなされるのでアトラクションに乗せられた軽快なライド感が途切れることなく続いて、『イージー☆ライダー』のバイクで石を探す『スタンド・バイ・ミー』のような晴朗感あるロードムービーに仕上がっている。

そして公式サイトの各エピソードの相関図を見ても分かる通り、主人公たちがひたすらモブに徹しているのも大きな魅力である。「モサ」同士の闘いに吹き飛ばされるし、泥棒容疑でしょっ引かれるし、クライマックスぎりぎりまでずっと鴨川の底を漁ってたりする。だからこそ各回の立役者たちと、そこでのドラマに終始することができる。主役を引き立たせるのがモブの仕事だ。
それでも四人の旅の道のりから発展する物語であることに変わりはなく、四人の繋がりや成長も縦軸的に描かれ、彼女たち自身からの真っ直ぐで素朴なメッセージもしっかり受け取ることが出来る。

理屈も法律も通じない。そんな奇想天外で夢に溢れた世界を旅する小さな冒険者、名無しのストーンズ、キング・オブ・ルーキーたち。
彼女らが巡り合う人々と彼女ら自身が夢中で転がる姿は、胸の中の確かな太い琴線をどうしようもなく掻き鳴らして止まない。
これからも転がり擦り減る日々に出来るだけ丸くならず、青臭くなんやかんやで生きていきたい。