ウシュアイア

バビロンのウシュアイアのレビュー・感想・評価

バビロン(2019年製作のアニメ)
3.7
東京地検特捜部検事・正崎善が追いかけていた製薬会社の不正事件が、東京西部に発足する独自の巨大な権限をもつ自治体「新域」の域長選挙に絡む政治スキャンダルとして発展する。域長選挙の政治スキャンダルは上層部からの圧力で曖昧になり、当選した域長・齋開化は支持勢力の意向に反して突如個人の生存の自由に基づき自殺希望者には自殺を認める「自殺法」を新域で制定する旨の宣言をする。そんな中、選挙にからむ事件の捜査中に何の前触れもなく自殺してした部下が自殺直前に接触した事件関係者の女・曲世愛が域長の齋の宣言直後に起きた集団自殺事件に関与していたことがわかり、正崎は行方をくらました齋と曲世を追う。


本作は、「自殺の是非」と「正義とは何か」という問いが設定されており、納得できるかどうかはさておき結末までの間に作品としての答えは出されている。設定した問いかけとその答えが明示されている点では作品の責任を果たしているとは言えるが、その結末はあまりに理不尽で、また解明されていない謎も多い。またよくあることだが、話のスケールを無駄に広げ過ぎている感もあり、現実世界の話なのに非現実的な展開も気になってしまった。

黒幕とされる曲世愛の能力というか特異体質はサイコサスペンスに留まるかSFに入ってしまうか微妙なところで、SFだと思い始めると話の説得力は削がれてしまうのだが、映像と演出と演技により何とかサイコサスペンスにとどめることができていたと思う。

主演の中村悠一さん、曲世愛役のゆきのさつきさんはもちろんのこと、キャストは演技派揃い。軽薄な言動をとる刑事・九字院役は櫻井孝宏さんで、登場時にはまたベタなキャストだな、と思ったものの、最期のシーンを考えると、櫻井さんがやはり正解だったと思う。さりげなく合衆国大統領役の田中秀幸さん、フランス大統領役の大塚芳忠さん、英国首相役の勝生真沙子さんたちの演技はこれぞ名優という重厚な演技だった。
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