静

映像研には手を出すな!の静のレビュー・感想・評価

映像研には手を出すな!(2020年製作のアニメ)
4.7
これは懐かしさを伴う新感覚の傑作アニメです。

その評判の高さから、原作コミックも読んだことがありましたが、気持ちの良い作風ではあったものの、この時点では(私の苦手な)情報量の多さから 途中で読むのを断念してしまいました。

しかし今作はそのようなデメリットを補えるアニメの良さを最大限に生かし、良質な仕上がりとなっており、作品の良さ・浅草たちのキャラの魅力も存分に発揮されていて、そのおかげでストーリーもよく伝わってきました。

既存のアニメには無い見た事のない自由闊達な表現で、作中の映像研の作品にも密接にリンクしており、没入感と共に溢れ出るアニメ愛をよく感じさせてくれます。途中 未来少年コナンなど宮崎駿監督へのオマージュも随所にあります。

しかしただポジティブで明るいだけでなく、外部に制作依頼する際(外注)の苦労、クオリティの高い作品だけでなく宣伝の必要性、お金の大切さなど、特に金森の現実的な逞しさやセリフなど、目を見張るシーンもよくあります。
彼女はクリエイターではなく毒舌ですが、クリエイターの二人を尊重し理解した上で 良い意味で厳しく優秀で、とても重要なメンバーであることが一目瞭然です。

またキャラの声についても全く違和感がなくイメージにピッタリです。原作者 大童先生を想起させる金森もそう。浅草も水崎も最高で、本当に見事なトリオです。

途中 三人それぞれが今に至る前の過去エピソードも、とても説得力があり心の琴線に触れ、より愛着が湧きました。

そして音楽も素晴らしく、特にOPソングは毎回何度も見たくなる程の中毒性を持つほどで、作画もシンプルながら最高で非常に楽しいです。
( NYタイムズで2020年ベストテーマソングに選出。作品自体も多くの賞でNo.1を受賞 )


ちなみに一応1つ気になった点を言わせてもらうと、最終話 映像研 三作目の出来映えは、導入は良かったのですが、途中 矢印の比較表現や、戦闘シーンの多さなど、それまでの浅草達の苦悩の制作過程から期待されていた、物語のメッセージ性があまり伝わってこなかったクオリティであったのが 残念でした。

それこそ、その前にあった一作目の予算獲得プロモ編と、二作目の文化祭編、二つの方がクオリティがとても高く、驚かされ熱かったです。

しかしそれこそ正に「まだまだ改善の余地ばかりだ。」と言えます。


この後、原作コミックを見返しましたところ、アニメよりもテンポが大きく異なり、アニメはそこを補った原作を超えるクオリティであると実感しました。これはレアケースであり素晴らしいです。

ぜひさらなる改善を遂げ 進化した続編・次のシリーズを観たくなりました。

原作:大童澄瞳
監督・構成:湯浅政明
音楽担当:オオルタイチ
制作会社:サイエンスSARU
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