喜連川風連

映像研には手を出すな!の喜連川風連のレビュー・感想・評価

映像研には手を出すな!(2020年製作のアニメ)
4.9
「チェーンソーの振動が見たくて死にかかってる人がいるかもしれない。私はチェーンソーの歯が跳ねてるところを見たいし、私はそのこだわりで生き残る!大半の人は細部を見なくても私は私を救わなきゃいけない!
動きの一つ一つに感動する人に私はここにいるって言わなくちゃいけないんだ!!」

ドタバタ3人娘の奮闘劇。

設定や資料、映像空間にこだわるメカオタクの浅草は宮崎駿。

人間の細かい動きや線画による「アニメ」日常描写を追求する水崎は高畑。

常にどう映画を売るかを考え、客目線で作品を繋げる金森は鈴木敏夫に重なる。

1話ごとに浅草の妄想がアニメーション空間に具現化し、それが壮大なカタルシスになる。
SEをわざと、声優の口で再現させることで、アニメ本編との演出に落差をつけている。どんなすごい妄想が膨らんでも、効果音が、ダメだと全く違うモノになってしまうのだ。

映像は音と映像が組み上がって初めて完成する。軽視されがちだが、映画の成否は音で決まると言っても過言ではない。

その見せ場に対して、それぞれの熱い想いが語られ、金森の冷めたツッコミが入るバランス感覚。

日常のドタバタもさすが湯浅正明。見せ場の作り方が本当にうまい。
ロボット研が大トリモノの末に逃げ切り、ひとつのアニメを上映に至るまでに何度も山場がある。

漫画原作も読んでるが、アニメになって全く印象が変わった。ものつくりする人全員必見。

「最強の世界(自分の理想のみたいアニメや映画)は自分で書くしかないもんな。」

「どこの誰だかわかんないけど、あんたのこだわりは私に通じたよ。」

「仕事に責任を持つために金を受け取る。
金は依頼した仕事の質を保証するためにあるんです。」

アニメ本編で「動き」を語り、オープニングでまさに「動き」を見せる。

アニメは全てに人の手が介在している。
そしてアニメーターはそれを動かす。

演技させるのは人だけではない。草のゆらめき、風、土埃、風車の回転、ありとあらゆるもので演技する。この凄さたるや。

「私が生きるってことはこういったモノを作ることなんだ!って。これはもうどうしようもない。」

人生の教科書です。
喜連川風連

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