都部

俺の妹がこんなに可愛いわけがないの都部のレビュー・感想・評価

3.4
オタクが一定の有害性を伴うアイコンだった時代を舞台にしていることもあり、物語の中盤までは公に出来ない趣味としてそれが扱われ、実際にその有害性と自己の存在の姿形に結び付く趣味を肯定を通す形で向き合う話だったのは少し意外。

倫理的に女子中学生が成人向けゲームをプレイしていることの問題などが、『それがどれだけ不純な物でも純真な好意であるから』と結局は棚上げされているのは不平不満が残りますが、世間から冷ややかな視線を受ける趣味により生じる人間関係の摩擦を語り部の兄が支えることで徐々に兄妹関係と友人関係が豊かさを得ていくのは小気味良さがある。

また京介を通した、桐乃の良くも悪くも等身大の妹を感じさせる理不尽性とそれを放置することを良しとさせない振る舞いに対する気持ちの視聴者との共有は成功していて、ヒロインとしてはともかく家族だからこそ見捨てられない感覚は実際よく伝わってきたかなと。『お人好しな友人の兄』という立場で別のヒロインと関与する距離感も好ましく、それだけに語り部の言動が物語の快/不快を大きく担う立場にありすぎるのでこの辺の匙加減にはどこか危うさを感じさせる。

たとえば桐乃の作品のアニメ化を巡るシークエンスは、『妹の為に陰ながら尽力する素晴らしき兄』をやる為に権威に逆らうという構図はやりすぎだと感じたし、ご都合的に配置された理解のない世間像とその聞き分けの良さは物語を大いに安っぽく感じさせるのは否定できない。
こうした"立派な兄"の成立の為に物語が歪む瞬間が多々あり、そこで不快や陳腐に感じることがあったのも事実なので、それが作品の味だと認知した上で総合的にはそんなに好きではないの一言に尽きるかなと。

とはいえ時代性を反映した作品として今見返すとそれはそれで面白いのは事実で、ヒロインたちを有効な立ち位置に維持させながら、この時点ではさっぱりとした しかし綺麗すぎない家族愛を描く距離感は好みではある。
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