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どろろのshihoのレビュー・感想・評価

どろろ(2019年製作のアニメ)
4.6
良かった。1話の橋のシーン、百鬼丸登場〜戦闘がカッコよくて心を掴まれて一気見した。

どろろは原作未読で、妻夫木×柴咲コウの実写映画を昔に観ただけだったから途中まで喋らない百鬼丸にそんなに違和感なかったんだけど、原作はよく喋るのね。

妖怪(鬼神)と戦いながらも本人も化け物じみてる強さ・見た目である百鬼丸が、体のパーツや五感を取り戻しながら外の世界・どろろたち周りの人間と関わって"ヒト"になっていく。しかし同時進行で鬼神を倒し続け、体を取り戻す際に生じる他人の不幸を省みずに進んでいくこと、恐ろしい存在を切り刻むことで"鬼"にも近づいていく。

それが「人か鬼か」っていうキャッチコピーなんだけど、どうにもならない民の苦しみは本当に可哀想だしなんとかしてあげたいけれど、元々はズルして百鬼丸の肉体を捧げた犠牲の上に成り立つ平穏なわけだから百鬼丸がそこまで責められなくてもいいじゃない、と思ったね。産まれた瞬間にあれそれ取られちゃったんだから、本能的に取り戻しているだけだもの。生存本能と同じ。それがどろろとの関わりの中で途中からは「どろろの見ているものを自分も見たい、同じように感じたい」ってなっていったのも、社会的な生き物として当たり前の欲求・権利でしょ。

アクションは冴えてるし演出もお洒落。多宝丸が裏主人公な感じで、彼の人となりや心情の変化が丁寧に描かれていたのも良かったかな。忠臣であり幼なじみである陸奥と兵庫の存在もよかった。

百鬼丸が最初血の通わない戦闘人形みたいだったのが、聴覚を取り戻して大混乱したり、痛覚が戻って痛みに叫んだりするのは見ていて興味深かった。ヘレン・ケラーみたいだ。それにしてはすぐ三語喋ったのでびっくりしたけどw 話数あるからもう少しそこ詳しくやってくれても良かったかもしれん。

出てくる鬼神(妖怪)たちはどれも現存する生き物の化け物版って感じであまり新鮮さを感じなかったのがちょっと残念。でもこの時代の妖怪のビジュアルってこんなもんか、何より偉大過ぎる原作があるからあんまりいじれないんだろうしな。ホラーっぽい描写を期待していたがアクション寄りだった。でも血の描写はちょうど良くて好みだった。(グロ過ぎず控えめ過ぎず)

しかし、鬼神たち異形の化け物は全て舞台装置であって、つまるところどこまで行っても"人"の話であったと思う。物理的に今より遥かに生き苦しかった時代設定だからこそ「人が人と生きるとはどういうことか」を登場人物達を通して考えさせられる内容だった。変にこの世界を肯定せず、醜さ・負の部分を圧倒的に多く見せられる。その中でもどろろと百鬼丸が懸命に生きていくのをただ見守る…みたいな、そんな感覚だった。

主題歌について。個人的に二期が最高。アジカンのOPは冒頭の百鬼丸のビジュアルと「腹の中で蠢いて」いる魑魅魍魎の動きがこの作品がどんなお話か、世界観がパッと伝わってとても良い。色味も良い。
EDのEve「闇夜」は2番の歌詞も含めてよく作品を表していて素晴らしいし、殺伐としたストーリー展開が続く中で美しくあたたかい映像が救いになった。

声優陣は醍醐景光・多宝丸・寿海・縫の方・琵琶丸・みお・しらぬいの声が大変良かったので彼らの素晴らしい演技の土台あってこその完成度だと思う。(主役二人もよかったよ)

いまいち爆発力はなかったが、演出良し・脚本良し・声優良し・アクション良しの間違いなくクオリティの高い良作だった。1話だけラブコメ寄りの話があったので癒された。原作の終わり方を知らなかったのでちょっと釈然としなかった部分があるけど、こういう話だったんだなぁとやっと消化出来たのでレビュー上げました。
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