ソウキチ

キャシアン・アンドーのソウキチのレビュー・感想・評価

キャシアン・アンドー(2022年製作のドラマ)
5.0
『キャシアン・アンドー』は6話現在、およそみんなが想像するSW的な記号をほとんど封印している。そのうえでめちゃくちゃスター・ウォーズとして成立させている。フォースやライトセーバーに頼らなくても、ストームトルーパーやお馴染みのシルエットのドロイド、ユニークなクリーチャー達がいなくてもスター・ウォーズたりえるのだと証明している。凄いことだと思う。

かつてないリアリズムで描写されるスター・ウォーズの新しい側面。映画シリーズではモブキャラとして描かれるような市井の人々の生活描写の細やかさが素晴らしい。特に帝国の下請け(この設定も素晴らしい!)をしてる民間の警備会社の社員シリルが仕事でヘマやって実家に帰るシーンなんか、万国共通の「実家オカンあるある」が描かれてて最高。

これまでは顔のないトルーパーの印象が強かった帝国軍の一兵卒が仕事そっちのけで天体イベントにうつつを抜かしたり、「帝国軍の四半期分の給料」とか「冬の一時休暇」とかいう本筋の英雄譚では絶対にありえない生々しいワードが聞こえてくるのも最高。

飲んだり食べたりの食事シーンが頻繁に描かれてるのも印象的で、とにかくこのユニバースにキャラクターが生活しているんだと思わせてくれる。

それらと同時に「悲しいけどこれ戦争(ウォーズ)なのよね」と言わんばかりにドライかつ即物的に人の死が描かれる。

そこに暮らす人々の生活感。戦場における名もなき死。メインシリーズでは行き届かないその世界の片隅のディテールアップをすることでユニバースを補強する。
これこそがポップカルチャー史上最大の箱庭コンテンツであるスター[ウォーズ]がスピンオフで本来やるべきことのひとつだったと本当に思う。

あと最近のスター・ウォーズは砂漠ばかりで辟易していたので、今回コルサント等の惑星都市描写が多いのもすごく嬉しい。

なぜ絶対にミスが許されなかった筈の『オビ=ワン・ケノービ』があんな悲惨なことになって、言うてマイナーキャラのスピンオフである『キャシアン・アンドー』や新キャラである『マンダロリアン』が成功したのか理由を考えると色々と想うところがあります。
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