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スター・ウォーズ:アソーカのフライパンのレビュー・感想・評価

スター・ウォーズ:アソーカ(2023年製作のドラマ)
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公式によるスターウォーズの同人誌化に拍車をかけた、デイブ・フィローニの良くないファンサービスが炸裂した懐古シリーズ。

ライトセーバー戦を中心としたアクションシーンのいくつかは見応えがあったが、ストーリー展開の理屈とスピードが今一つな上に、シリーズファンに媚びた何の意味もないファンサービスのつるべ打ち。

このシリーズ、この銀河に溢れかえるダメなドラマにありがちな典型的欠陥があると思う。それは <イベント> を描くだけで、それによって引き起こされる人の内面的な変化や人間関係の <ドラマ> がない。その結果、この8話が何の話だったのかが全くはっきりしない。師と弟子の物語だというのなら、なおさらアナキンとアソーカ、アソーカとサビーヌ、ベイランとシンの関係性の変化にドラマの焦点を当てなければいけないのに、展開のための展開しかないため、登場人物の行動原理が著しくご都合主義で筋が通らない。

やたらと絶賛されてるアナキンとアソーカの邂逅シーン、ただアニメのもろもろを実写で見られて嬉しいだけのスッカスカのシーン。ほぼ1話まるまるかけて「生きるか死ぬかだ」「私は生きることを選ぶ」はぁぁ!!??無駄なシーン垂れ流して時間を浪費した挙句、何の文脈も無しに当たり前の答え出して「私は生きることを選ぶ」って、むしろ死ねよ。

例えばこの話を貫くサビーヌの物語一つとっても酷い。ジェダイの素質が著しく低い彼女が、師匠であるアソーカとの関係性を回復し人間的に成長することで最終話でのフォースの会得につながるべきなのに、サビーヌはひたすらに師匠の言いつけに従わず、私情のために銀河の運命を脅かし、反省する様子もないまま師匠の許し、というかただの甘やかしを受けて気付けば立派なフォースの使い手に… アホか!

私情を優先して心に魔が差してダークサイドに堕ちたのがアナキンだし、敵の罠にかかって右腕失ったり友達を奪われたのがルークだろ。懐かしいキャラを出してファンを本能的に興奮させることばかりに執着して、一番トレースすべきスターウォーズの哲学やイデオロギーと全く逆のメッセージをぶち込んでいることに、フィローニもファンも気付かないのだろうか⁉︎

例えば、エズラに会いたい思いから敵の復活に加担し、その結果エズラが死んでしまったことで、彼の命も生前に払った究極の犠牲も全て無駄にしてしまうサビーヌがそれを機に闇に堕ち、アソーカは師匠と同様に弟子を失ってしまう。そして、シーズン2でアソーカはアナキンの二の舞を阻止するべく、自らのダークサイドと向き合うことで弟子のサビーヌを暗黒面から救い出す…とか(?)
こっちの方がよっぽどスターウォーズの文法に則ってるだろ!フィローニは自分の生み出したキャラを甘やかし過ぎだ。

アソーカをタイトルに掲げながら、やっていることはこれまた『新たなる希望』の焼き直しシリーズであるCGアニメシリーズ『反乱者たち』の実写化。むしろ、自分が手掛けたアニメのキャラを実写化させることが、公式の立場を利用した究極のSWファンボーイであるフィローニの目的だとみて間違えないと思う。
メイキング映像でも「アソーカの物語を考えた時、アナキンと会わせられるぞと思った。」と発言していることからも明らかな様に “ファンが喜ぶイベント” が先行した物語づくりをしているので、アナキンやレックスや3POの登場も馬鹿なファンに抵抗不能なノスタルジー的興奮を与えるためだけに機能し物語的な意味はない。

何気にムカつくのが、別銀河の描写。ただ単に遠すぎる別の惑星程度で、独自の生態系や政治など発明的で斬新な描写がほぼ無い。

ライトセーバーの組み立てと、ヤドカリ種族は良かった。特にヤドカリの方は非好戦的な遊牧民なので、防御に徹した家屋兼ビークルに乗ってるところとか、説得力のある描写で凄く好き。見た目がアザと可愛いのではなくて、動作や性格のチャームで可愛く見せるのもSWイムズが感じられて良かった。

スターウォーズ大好き
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