Blue

DEVS/デヴスのBlueのレビュー・感想・評価

DEVS/デヴス(2020年製作のドラマ)
4.6
今年のノーベル物理学賞は量子もつれの研究者が受賞しましたが、まさにその量子もつれとEPRパラドックスの事をテーマにしています。

全8話で一気に見れました。かなり好きなドラマです。ポーティスヘッドのジェフバーロウがとても素晴らしいサウンドを作っていて、映像、音楽、演出にストーリー展開、全てにおいて満点に近い。

同時にアメリカの社会構造の変化も盛り込んでいて、ネイティブ・アメリカンの土地をヨーロッパの白人が侵略してその土地に城を築き、来たる未来はラテン系、アジア、黒人の方が、つまり有色人種の方が増加して白人が少数派になるという事もドラマの中で描かれています。

かなり面白いストーリーだし、難易度の高い量子もつれの事を時代の流れとともに良く描かれてると思うし、脚本は本当に素晴らしいと思います。
ただ残念なのはここまで徹底的にやってるのに日系人が香港の人を演じてるところかなw。

そこまでごちゃごちゃ言うことでもないかもしれないけど、ここまで徹底して作ってるならばそこもちゃんとできなかったかな〜と思ったりしました。

また仏教の思想というか考え方そのものが量子力学に近いので、アジア系のソノヤミズノが主役になっています。インドではあまり仏教徒は多くないのでインド人が主役ではないのかなと思ったり。
エクスマキナ、アナイレイションと面白いかどうかは観る人次第だけど、記憶に残る作品を作り続けてるアレックスガーランドの2020年のSFドラマでかなり個人的には気に入りました。

ここで量子もつれを解説するのは限界があるけど、光も光子という粒子なのでそれを飛ばすとなぜか干渉縞/かんしょうじまができるんですね。
光子があたる部分が白、当たらない部分が黒で、縦じま模様に必ずなると。

それは何故か?と突き詰めていくとどうもコピーの世界が鏡合わせのようにあって同じように光子を飛ばしているから干渉縞ができるのではないか、という結論が科学者、数学者から出ています。2022年はそんな量子もつれの研究がノーベル賞を受賞したんですね。

ただ量子の研究はわかった事を言う人間が1番わかってないという名言があるくらい未知の研究ですが、その分野の研究が次世代のテクノロジーを飛躍的にあげるのは間違いないので、それをうながすためにノーベル賞を与えたのだと思います。

嘘のような話ですが、Netflixに入っている人ならばインフィニティ/無限を旅するというドキュメンタリーを見るとわかります。このドラマを見た後でも見る前でも鑑賞する時この物語の奥深さがわかると思います。ま、決して万人向けのドラマではないですが、SFが好きなら量子もつれという事象は知っておいて損はないです。

EPRパラドックスとはアインシュタイン他、2名の研究によって発表された論文ですが、光よりも速いものはないのに、どれだけ距離が離れていてもそれが何光年という天文学的な数字でも時差なく情報交換できるのは、光よりも速いのではなくもう未来が確定しているから、という研究発表がされています。
ドラマでその事が言及されます。

主人公が朝帰りする時に路上生活してる白人が、せいぜい今のうちに楽しんでおきな、と言うのが印象的でした。有色人種が多くなるアメリカにおいて、確実にストーリーラインで黒人やアジア人が主人公になるドラマが増えていくのだなという事を実感しました。
その点でも見る価値はあると思います。ヒューマンドラマとしてもかなり面白いのでオススメです。
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