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どうする家康の参考文献のネタバレレビュー・内容・結末

どうする家康(2023年製作のドラマ)
4.8

このレビューはネタバレを含みます

傑作。
一貫して乱世を生きながらも戦いのない世の中を目指した家康像が描かれていた。
2023年時点でも戦はなくならないが、平和を残そうとした人間の話を放送する意義は間違いなくあったと思う。悩みながら助けられながら決断をくだす家康のリーダー像は間違いなく現代に通ずるものである。
また、日本人の想像する代表的な"徳川家康"像を良い意味で壊し、本作の"徳川家康"と彼の周りの人々を再構築した点でも傑作と言いたい。

家臣や家康の妻たちの掘り下げも見事だった。
フィクションであるため脚色はもちろん必要であるが、うまくキャラクター付けしたうえで史実を取り込んでいたのだと思う。

初期の家康の物足りなさ、危うさを孕んだあどけなさが家臣団のやり取りとマッチしておりコミカルな展開がより一層しんどい展開を際立たせていた。弱くて美しい白兎の家康は、狡猾な狸と言われるようになるが、彼の歴史は、過去は、家康とともに時代を生きた人々の中に保たれている。
また、それぞれの登場人物をエピソードを通して印象づけることで、家康との各々の出来事や別れをより感情揺さぶるものとしていた。これは長い時間をともに過ごすことができる大河ドラマならではである。

特に上げるとすれば25回の「はるかに遠い夢」と、44回の「徳川幕府誕生」が素晴らしかった。
それまでの放送がぴたりとはまり、さすが古沢良太の脚本と言わざるを得ない完成度であった。
伏線回収という表現では物足りなささえある。一つの歴史が地続きの上に成り立っていることが表現されていたように感じた。

また、松本潤演じる家康と、有村架純演じる瀬名が素晴らしく本作において「平和な世を目指す」ということに説得力をもたせていた。
それは全体を通して丁寧にその二人や家臣団の関係性を描いていたからだと思う。
言葉にしない言葉以上の人間関係や彼らの想いが、脚本と演出そしてキャストにより、高い完成度で表現されていた。

タイトルでは、45回の「二人のプリンス」が秀逸であった。これは、秀忠と秀頼、家康と氏真のダブルミーニングになっている。
この回を見ていて、すっかり年をとった家康と氏真もプリンスであったことにハッとさせられた。沢山の人を殺したと嘆く家康と、助けられた人もいると話す氏真は紛れもなく今川家で一緒に過ごしたプリンスであった。

最初に出てくるモチーフも楽しむ要素の一つであったように、オープニングの演出が時期によってガラリと変わるのも楽しかった。序盤の明るく軽やかなデザインから、物語が進むにつれ黒色や金色を全面に使った重厚なデザインになっていく様子は家康の変化と通ずるものがある。
44回の「徳川幕府誕生」では、曲がオーケストラメインのものではなく、ピアノがメインのものが使われていた。
ターニングポイントとしてオープニングを使う演出は本作だから出来たものだと思われる。

世間的な評判は決して万人からウケるわけではない『どうする家康』ではあったが、間違いなく傑作と言える。かつての『いだてん』と同様の現象である。すでに、視聴率ですべてを語る時代は過去となった。
教科書に乗っているレベルのものが観たいのであれば教科書を読めばいい。過去作と比較するのならば過去作を観ればいい。
視点によって人物の捉え方は変化し続ける。時代が経つことによって、新たな情報が増えることもあるし、一般論も変わっていく。また、残されているものだけが全てではないだろう。そんなこともわからないのか。
ましてやテレビドラマはフィクションである。創造力を失った作品ほど面白くないものはない。
私は今日にこの素晴らしい作品に出会えたことが嬉しい。『どうする家康』にありったけの感謝と称賛を。
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