岡田拓朗

ブラックペアンの岡田拓朗のレビュー・感想・評価

ブラックペアン(2018年製作のドラマ)
4.3
ブラックペアン
.
今クール1の傑作ドラマだった。
.
医療業界に蔓延る不が露わになっていて、医療業界の怖さを知った。
人の命が関わることに対して、研究が優先されることによって、命が危ぶまれることはあってはならないはずなのに、そのような仕組みになっていないのに、若干の闇と医療業界の目的を置くことの難しさを感じる。
.
医療業界のことはそこまで詳しくないが、純粋に人を助けるために奮闘する高階先生(小泉孝太郎)と世良先生(竹内涼真)に力と技術がないことで、上にうまく利用されて本来考えられるべきこと以外に頭を悩まし葛藤に揺れていく姿は見ていて辛かったし、どうにかならないものかとずっと思っていた。
.
今作は特に高階先生を軸にして鑑賞すると、より医療業界のドロドロ感というか、出世争いの厳しさが感じられるような内容になっていて、そもそも医療業界のあるべき姿に対しても考えさせられる。
.
高階先生の理想は一人でも多くの人が救われるようになることで、それが医療業界の理想であると思うのに、医療業界ならではのシステムや得点制度がそれを逆に邪魔しているようにも思えてもやもやした。
.
目的は何にせよ、なんやかんやで人を助けることにおいて一番コミットできていたのが渡海先生(二宮和也)で、渡海先生の強さは圧倒的な技術力と出世や居場所を全く望まないその振り切れた心意気だった。
.
技術があればどんな人をも助けられるのに、なぜそこを極めようとせず、使い物になるかわからない論文作成に人の命が犠牲にならざるを得ないのか。
それが渡海先生から見た医療業界への疑問であり、全く軸がブレていなかった。
.
話しが進むにつれて医療業界に対し、様々な問題定義を突きつけている今作。
・目の前の人の命を救うことと将来のたくさんの命を救うことのどちらを選択するか。
・医療は機械に取って代わることができるか、やはり人の手によってなされるべきか。
・出世が論文による得点制度で決まっていくことは本質的なのか。
・医療業界において、どのような人が意思決定をする立場に立つべきなのか。
・医者として大切なこととは。
.
どのような結論に至るとしても、結局は軸となる考え方が大事なのは言うまでもないが、特に医療業界の得点制度みたいなものに一石を投じようとしているように見えた。
時代が変わることで、医療業界のあり方も今一度再考すべきでないかと言わんばかりの内容とメッセージ性。
.
色んな立場からの医療業界の矛盾や理不尽さも描かれていてストーリー性もあって、とても密度の濃いドラマだった。
.
また、渡海先生と佐伯教授(内野聖陽)の確執が最後まで暴かれず、色んな伏線を引いた後に、最終回で一気に全て回収されて、さらにドラマの展開として申し分のない復讐劇要素も入っていて、しかもその復讐にもまさかのどんでん返しがあって感動が上乗せされる。
.
佐伯教授が渡海先生がブレないように、医者としての技術をより上げるために、一人でも多くの患者を助けるために、変えるべきでない考え方を変えないように、せめてもの報いとして、自分が嫌われてでも、あえて東城大学で渡海先生を雇い続けて、ペアンの真実を黙っていたことにも感動。(ここまで考えられていたのも想定外だった)
.
医者は普通でいい。
医者はどこまでも患者のことを考え、人を救うために動くべき。
医者は謙虚でなければならない。
それが今作の中での答え。
.
最終回で伏線全てを回収してまさかのどんでん返しに医療と医者の本質を説いて感動を上乗せする。
さらに「邪魔」と「1000万円」にも意味があって、どこまでも抜け目がなさすぎる。
ブラックペアンの意味も深かった。
.
ラスト泣けたー。
本当に脚本が神懸かっていた。
.
P.S.
俳優としての二宮和也が本当にすごい!!
どれだけの役がこなせるんだと、改めて感じた。
ジャニーズの中では、岡田准一と並ぶ名だたる俳優陣とも肩を並べられる名優のお一人だと個人的には思います。
それ以外のキャストもスタッフのみなさんも本当に頑張ったんだろうなと思うほどの渾身の作品だった。
人の見方によって主役を決められるドラマという意味でもかなり秀逸だった。
岡田拓朗

岡田拓朗