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FM999 999WOMEN‘S SONGSのumisodachiのネタバレレビュー・内容・結末

FM999 999WOMEN‘S SONGS(2021年製作のドラマ)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

16歳の少女が「女って何?」と呟いたことで突如としてはじまる脳内ラジオ。3人の「女」が1曲ずつ女についての歌を披露していく。

かなり直球のテーマで、それぞれの「女」が示すものも直接的。ただ、最初の宮沢りえと次のメイリンが割とハッキリしたフェミニズムテイストなのに対して(両者はある意味対称的に示されている)、最後の菅原小春は完全にメタファー仕様。

菅原小春がデフォルトで雨に降られ諦めている姿は、はガラスの天井のメタファーだと私は解釈したのだが、菅原小春を踊らせないことで抑圧(でもその中にはエネルギーが迸っている)を巧みに表現している。

「自分が望んでるからじゃないの?」という言葉は、そのまま「出世したがらないのは女の方では?」「専業主婦を希望しているのは女でしょ?」という言葉にも置き換えられる。「え、そうなの?」と1人で必死で声をあげてみても、ガラスの天井は割れてくれない(雨は上がってくれない)。不公平なのは「自分にだけずっと雨が降っていること」なのに、「自分の頑張りが足りないからだ」「自分で望んでるんだろ」「いやなら自分でどうにかしろ」と言われる理不尽さ。生まれたときからずーっと雨に降られてたら、頑張る気力をなくして「そういうもんだ」と思って、その範囲での生きやすさに流れていっちゃうのも無理はないのにね。だから、男性がこういうことをここまで露骨に表現してくれるのは、私は嬉しく思う。

……と、(少なくとも私にとっては)思考の翼を大きく広げることができる作品だった。作りこまれた美術や独特の感性は単純に観るものを惹きつけるし(菅原小春のシーンの照明どうやってんだろ?)、素直に続きが気になる。テーマ性が強すぎる部分をどう感じるかは人によるかもしれないが、こういったコンテンポラリーアート寄りのドラマが生まれるのは文化的な刺激になると思うし、これくらい直球で社会に挑む姿勢に尊敬の念を覚える。良い。
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