くるぶし

怪物のくるぶしのレビュー・感想・評価

怪物(2021年製作のドラマ)
4.9
2021年に見たドラマを軽々と凌駕…というか、サスペンス・スリラーではもうこれ以上の作品が出てこないのでは?と思うほど、恐ろしいほどの完成度です。
まさに“グエムル”級。

小さな町で20年前に起きた連続殺人事件をきっかけに地獄を味わった男が、“怪物”を捕まえるために孤軍奮闘する物語。行方不明になった人を待つ家族のために、自分のために、自ら“怪物”になって。

隅々まで演技派が揃ったキャスト陣の中で、やはりドンシクを演じたシン・ハギュンが圧倒的。
血走る瞳で相手を見据え、涙を流しながら笑みを浮かべる。憎しみと悲しみを超越したドンシクの不気味な微笑みが映し出されるたびに物語は加速度をあげ、どんどん面白くなっていく。

また、何が善で悪なのか、常識の外側を意識せざるを得ない脚本が秀逸。法の中でしか戦うことを許されない警察官の矜持、葛藤する姿に打ちのめされました。

3年かけてキム・スジン作家ニムが書き上げたという脚本は、最後の最後まで緊迫感を残しつつ、誰もが納得できるエンドを用意してくれたことに感謝しかありません。

韓国では死体が発見されれば97%以上の確率で犯人を検挙できる。だから20年以上見つからない“行方不明者”の物語にしようと構想したとのこと。
1年かけて書いたものを一からやり直したり、マニャン派出所の所長のモデルとなった警察官に物語が成立するか確認してもらいながらの作業だったそう。
「秘密の森」もそうですが、徹底した取材で事実に基づくストーリーをフィクションとして成立させる凄みに、韓国ドラマの底力を感じます。

とにかく、なにも前情報なしの状態で見ることをおすすめします。
現時点で韓国ドラマの最高峰、この作品抜きに韓国ドラマを語れないほどの大傑作です!
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