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機界戦隊ゼンカイジャーのtubameのレビュー・感想・評価

機界戦隊ゼンカイジャー(2021年製作のドラマ)
4.2
文字通り全力全開で駆け抜けた賑やかで明るい1年だった。


本作は、人間1人とキカイノイド(※変身前もスーツアクターが演じるロボットの様なキャラ)4人という異色の5人編成。4人の故郷・キカイトピアが混ざった世界に、セカイを閉じる悪の組織トジテンドから刺客として毎回一風変わったトピアのワルド(怪人)が現れ、メンバーがユニークな方法で乗り切る物語だ。独特の発想法はSNSではゼンカイ脳と呼ばれ、毎回盛り上がったのも懐かしい。


序盤は主人公の介人以外に祖母のヤツデ(榊原郁恵)しか人間が居ない攻めた設定だったが、芸達者な声優達の力もあり、個性的なキカイノイドたちに直ぐに愛着がわいた(OPで声優の名前が大々的にクレジットされたのは本作ならでは)。アドリブの掛け合いの多さも楽しかった。腰は悪いが頼りになるイケオジ、ジュランが一番お気に入り。
途中参加のキャラも含めて、総じて皆好きになってしまう魅力に溢れていたと思う。
途中からツーカイザーやステイシーら人間組の比重が大きくなったのはやむ無しと思いつつも、個人的にはキカイノイドメインの話ももう少し観たかった。


本作では節目の45作品としてのアニバーサリー要素も採り入れられている。
変身後の介人のスーツは白で、従来の【リーダーは赤】パターンを崩す試みをしつつ、デザインは過去作品をモチーフに(介人はジャッカー電撃隊のビッグワン、敵キャラのステイシーはバトルフィーバーから採用されたのが新鮮)。各戦隊を【イメージ】した力も物語に沿って使われた。イメージというのがミソで、毎回意外な解釈で登場する歴代の力は楽しみの一つだった。中にはやり過ぎ感のあるものもあったけど...。


一貫してコメディに徹し、意地でもシリアスにならない物語は明るく前向きなパワーが詰まっている。
とんでもエピソードの数々は、これからも忘れられないだろう。カシワモチ、テニス、無限年明け等々。
それでいて本作にはしっかりとしたぶれない芯がある。繊細なキャラクターの心情表現に感動し、大人の全力のおふざけに笑いながら同時に考えさせられる深いメッセージ性。細部まで練られた丁寧な脚本が素晴らしい。終盤の思いがけない展開には驚き、最終回では思わず涙した。


どんな世界も面白がり、価値観の違う人々と手を取り合おうという精神や、開けた明るい世界へ前向きに踏み出す彼らの姿は鬱屈した世相では一際輝いて見えた。現実よ、ゼンカイトピアの様であれ。
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