☆☆ほんとはフライデーの警告!警告!警告!が聞きたかったけど(笑)レベルの高い愛のスペースファンタジーです
子供の頃、テレビで放映されていた海外ドラマをよく観ていた。
なかでも自分が推す、ワンピース風にいうと海軍三大将ならぬ、海外ドラマ三大将は、
・宇宙大作戦(初代スタートレック)
・原子力潜水艦シービュー号
・宇宙家族ロビンソン
の3作品。
この3作品はいずれも1960年代後半に制作された人気シリーズもので子供にもわかりやすい飽きのこないストーリーが秀逸だった。
本作、「ロスト・イン・スペース」は、3つめの「宇宙家族ロビンソン」のリメイクになる。
☆オリジナルの宇宙家族ロビンソンとは
ロビンソン一家というのは、人間が地球以外の惑星で生活できるかどうかの実証実験をやることになった人類最初のファミリーという設定。
地球を飛び立ってほどなく宇宙船の故障で得体のしれない惑星に不時着し、ロスト・イン・スペース、つまり宇宙で迷い子となる。
壊れた宇宙船の修理が終わるまでの間、クルー全員船内での寝泊まり生活が始まる。
ところがいろんな異星人の来訪により、ロビンソン一家はてんやわんや。
暴力的な異星人もいれば、最初は友好的に接してくるがほんとは腹黒いとか、現代のSFドラマにおける異星人タイプの原型が出揃う。
考えるとあの時代、スタートレックもそうだが、当時の米ソ冷戦構造が多少なりとも影響していたかもしれない。
異星人(あるいはクリンゴン)≒ソ連
とにかく宇宙は食うか食われるかの厳しい世界なんだと子供ながらに教えられた。
基本的に1話完結型で、話の最後に次の話の異星人がちょこっと出てきて、
「こいつは敵なのか、味方なのか?」
といったようなテロップと共に終わる。もう次の話が気になってしょうがない、実にえげつない終わり方をしていた(笑)
クリフハンガー方式というシナリオライティングの技術らしいが、それにまんまとのせられ欠かさず観ていた。
☆ではリメイクはというと
オリジナルのメインであった、一家VS異星人という構図ではなく(異星人も出てくるには出てくるが)、より家族愛にフォーカスした、いってみれば「日曜ファミリードラマ 愛は宇宙を救う」的な作品に仕上がっている。
登場人物の基本的な座組はオリジナルとほぼ同じ。
ロビンソン一家(父・母・長女・次女・長男) + パイロット兼保守技術員 + ドクタースミス + ロボット
ロビンソン一家は、父、母を筆頭に、子供ら全員、生真面目で優しく責任感が強い。
この一家に対して、ドクタースミスという、エセドクターはとにかく曲者、とにかくお騒がせ野郎。ずる賢く計算高いが、妙に小心者。
ロビンソン一家のあらゆる局面で「まじめかっ!」的な性分を逆手に取り、あるときは裏切り、あるときは迷惑をかけ、あるときは自分が掘った墓穴にはまり逆に助けられ。というようなことを性懲りもなく何度も繰り返す。
憎たらしいけど、でもどこか憎めないとこもあって、
それがドクタースミス。
オリジナルと本作もスミスのキャラ建ては同じで、なんでこの船に乗ってるの?というおじゃま虫ではあるが、オリジナルのほうが、より物語にドライブをかけるという点において、ある意味主役といっても過言ではなかった。
そして、ロボット。オリジナルではフライデーと名前がついていた。
オリジナルのロボットは実にアンティーク感があった。
正体不明な異星人など危険が近づいた際は、検知してアラートをあげることができる。
「警告!警告!警告!」
と言いながら、洗濯機の下の排水用ホースをとってつけたような蛇腹風の両腕(笑アンティークなんです)を振り回す。
検知機能は優れているが、結構弱くて、すぐに壊れる。
壊れると、洗濯機の下の排水用ホースをとってつけたような蛇腹風の両腕(再笑)が、びよ~んとだらしなく下向きに垂れてしまう。
その壊れ方が妙に愛らしかった。
☆ではリメイクのロボットはというと
本作の中心人物となる。
人物といっていいかは別にして、彼のー彼と言っていいかは別にしてー、その出自と謎、およびロビンソン一家と彼が触れ合うことによる変化、あるいは進化が味噌。
本作はオリジナル同様、古典的なスペースファンタジーの定番でもある宇宙移住PoC(実証実験)ものであるが、描かれているのはロビンソン一家の家族愛を通してみえる、人間VSコンピュータという永遠のテーマでもある。
ここ数年来、ビジネス世界も巻き込んで巷では「AI(人工知能)が人間を超えるのではないか」という話がトレンドになっていて、書籍もよく出ている。
しかし、そのQは永遠のテーマ。当然答えは出てないし、これからも出ないだろう。
本作は、こういった昨今のコンピュータは人間を超えるかというテーマをうまく取り込み、古典SF作品を蘇らせた好事例といえるだろう。
ただ、惜しむらくは、オリジナルフライデーの「警告!警告!警告!」が無かったのがちょっと寂しかった。