1985年テレ朝貞永方久監督（2作目）。天知茂美女シリーズ第25（最終）作。この年の7月に天知茂が急逝し、天知茂の最大の当たり役になったこのシリーズも作が最後となり、死後の追悼放送となってしまった。美女は岡江久美子とこの時期だけドラマに出ていたらしい代日芽子。冒頭黒いドレスで登場し、青のジャケットの明智とすれ違う場面から象徴的。共演は高橋昌也、長塚京三。天知による最後の謎解きと岡江を抱きかかえた天知の姿で終わるのが印象的。尺の問題があったのか、代のヌード撮影場面や絵画オークション、謎解き場面が長いがそれはそれで楽しめる。
本作で天知茂による傑作テレビドラマ、江戸川乱歩の美女シリーズを完走。小川真由美の「黒蜥蜴」、夏樹陽子の「エマニエル」、長尺の「天国と地獄の美女」、「天使と悪魔の美女」が特に面白かったが、やはり天知茂ならではの趣き、立ち居振る舞い、渋い声が各作品を引き締めている。
1950年代から二枚目俳優でありながら新東宝という世界で出演作に恵まれなかったように見える天知。人生の最後はどう過ごしていたのだろうか。改めて昭和の名優に感謝。
