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メイドの手帖の鑑賞者のネタバレレビュー・内容・結末

メイドの手帖(2021年製作のドラマ)
3.0

このレビューはネタバレを含みます

一貫性がないという印象。
マーガレット・クアリーの演技も、ちょいちょい虚構的な演出が入るのも。
残金の描写とソファーに飲み込まれるシーンは良し。

明らかにシスターフッド的なフェミニズムを描こうとする意図が見えるけど、それは悪質なミスリードじゃないか。
一番の問題は家父長制ではなくて、「(家庭・経済的状況・友人・学歴等を含めた意味での)環境の格差」でしょ。結局のところ、足の引っ張り合い・負の連鎖こそが彼らの置かれた状況。この連鎖を断ち切れるのはひとえに、その連鎖の“外部”の人間。本作で言うところの、ネイトやレジーナ(デニーズも含めてよいか)。自浄作用はほぼほぼ期待できない。
ということは……連鎖外部の人間が「他人事」だと思っている限りアレックスのような人たちに救いはないということ。このことをもっと積極的に描くべきではなかったか。

「認識的不正義/epistemic injustice」とまではいかないまでも、認識的な資源の欠如がいかに壊滅的な被害をもたらしうるかということがよくわかる。知が力であるならば、無知は非力である。やっぱり「教育」ですわ。

最近ニーチェの『ツァラトゥストラ』を読んでいると、そこに「人は自分たちよりも良い存在を生み出すためにこそ結婚・出産すべきである」という趣旨のことが書かれててね……。本作を観たことでこの思想が一層染み込んでくる。
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