うさこ

メイドの手帖のうさこのレビュー・感想・評価

メイドの手帖(2021年製作のドラマ)
4.0
DVパートナーから逃げてシングルマザーになった母子の物語。社会の底辺で、様々な援助を受けなければ生きていけない女性の葛藤を描く。主人公のアレックスがいつも前向きなことと、娘のマディが本当にかわいらしいこと、字幕やアレックスの妄想を言語かするようなユニークな演出により、どん底なシーンが多いけれど明るく救いのあるドラマになっている。

日本でも一度セイフティネットから転げ落ちると復活がものすごく大変だが、アメリカもまさしくそうなのだということがよくわかる。援助の方法がいくつかあるにせよ、順番待ちだったり、審査が厳しかったり。特にアレックスのパートナーのDVが身体的な暴力ではなく、暴言や経済的な締め上げだったりしたので立証に苦労するあたりは、日本でも同じではないだろうか。

またアレックスの母親は双極性障害っぽい困った人なのだけれど、母子で育ったアレックスはおそらくヤングケアラーのような育ち方をしたのではないだろうか。ドラマでは描かれないけれど、迷惑としか思えない毒親をなかなか断ち切れないところを見ると、長年共依存のような関係だったんだろうと推測できるし、だからアダルトチルドレンのショーンに依存するような関係に落ちいったんだろうなあと考えられる。このような問題を抱えた人たちは日本でも多いのではないだろうか。

実話なのだそうだけれど、アレックスが掃除専門のメイドとして有能で、一心に掃除をして家がきれいになっていくシーンは見ていてすがすがしい気持ちになる。依頼人のレジーナがある時「仕事が最後の砦。決して手放ないで」と言うのだけれど、本当にこの言葉がすべてだと思った。仕事と住まいと、適切な援助。ほんと必要。

しかし、どこがタイトルをつけたのか知らないが、手帖なんて今時使わない言葉で変すぎ。原題どおり「メイド」でよかったし、せめて「メイドノート」とかだろ?って思いました。ノートに書いてたんだし、ドラマの本質はそこではなかったんだし。
うさこ

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