こたつむり

おっさんずラブのこたつむりのレビュー・感想・評価

おっさんずラブ(2018年製作のドラマ)
4.0
BLを一般的なものにした(と噂の)ドラマ。
人物の造形が見事でした。主人公も、彼に恋する面々も、魅力たっぷり。脇を固めるキャラクタも個性豊かで思わず頬が弛みました。

また、同性愛を扱っているから配慮もバッチリ。視聴者を不用意に傷つけないように、台詞や演技、演出に心を配っていることが分かります。だから、心おきなく楽しむことが出来るんですね。

特に素晴らしいのがギャップの使い方。
笑いはギャップがあるから生まれるもの。それを性差だけではなく、世代間のギャップも交えることで抵抗感を下げていました。ある意味、裏MVPは金子大地さん演じる歌麻呂くんでしたね。

だから、本作は傑作。
特にコメディは横軸(キャラクタ)が重要。
縦軸(物語)は恋愛ドラマの基本をなぞるだけで問題ないのです…が。

「モッタイナイ」と思ったのも事実。
横軸が見事なら縦軸も見事であってほしい、と考えるのは贅沢なんでしょうか。特に主人公が同性に惹かれていく展開。ここが本作のキモだと思うのですが…。

「恋は恋愛になり、恋愛は愛になる。愛は愛情となり、愛情は情になる」と誰が言ったかは知りませんが、恋は“理解しようとする気持ち”であり、愛は“理解を積み重ねる気持ち”だと僕は思います。

そう考えると本作に足りないのは“理解”。
主人公に恋する面々は彼を“理解”しようとしたのか。そして、主人公は誰かを“理解”しようとしたのか。この辺りの描写が希薄で、どうも想いが伝わってこなかったのです。

というか。
この論法で言うならば、彼が選ぶべきは××××さんが演じる“あの人”でないと合点がいきません。誰よりも何よりも主人公を“理解”しているのは“あの人”だと思うんですよね(自身の気持ちには鈍感でしたが)。

まあ、そんなわけで。
BLに苦手意識があっても楽しめるドラマ。
気負わずに臨むが吉ですが、創作とは他人を傷つけることを覚悟するもの。それは大量消費されるテレビドラマも同じ。その覚悟があれば高みに行けたと思うと…やはりモッタイナイです。
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